今週の一句~春の空 坪内稔典

ゆびきりの指が落ちてる春の空     坪内稔典(つぼうち・ねんてん

 

(ゆびきりの ゆびがおちてる はるのそら)

 

「指」というと、この句と、

 

秋風やひとさし指は誰の墓     寺山修司

 

を思い出す。

どちらも一読、ドキッとする。

「季語」の付け方が、この作者たちの違いを浮き彫りにしている。

寺山の句の「秋風」は、どこか「憂鬱」で、寺山俳句の詩情を象徴している。

 

稔典さんの「春の空」は明るい。

もちろん、一句全体が明るいわけではない。

ただ、「春の空」が憂鬱だの、淋しさだの、そういう深刻さを打ち消している。

「ゆびきりの指が落ちている」という深刻さをだ。

 

稔典さんの俳句というと、「意味」や「詩情」より「調べ」を優先しているよう思える。

が、こういう句を見ると、やはりそれだけではない。

きっと稔典さんの句には、深い思索があり、それを極限まで「か細く」して、俳句の醍醐味である「軽い調べ」に乗せる。

それが稔典俳句の一つの手法ではないか。

今週の一句~春の空 坪内稔典」への2件のフィードバック

  1. 稔典さんの句には何処か違うものをかんじていましが
    そこが楽しいところだと感じました。
    ありがとうございました。

    • どくだみさん コメントありがとうございます。稔典さんの作品を通しで読むと、いろいろなメッセージを含んでいるように思います。

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