中村猛虎句集『紅の挽歌』が「好日」9月号で紹介されました!

 

中村猛虎(なかむら・たけとら)、本名・正行(まさゆき)。

1961年生まれ。

2005年、句会「亜流里」設立。

2011年、風羅堂第12世襲名。

現在、句会「亜流里」代表、俳誌「ロマネコンテ」同人、俳誌「俳句新空間」同人、現代俳句協会会員。

早逝の妻に捧ぐ。

第一句集。

 

さくらさくら造影剤の全身に

余命だとおととい来やがれ新走

卵巣のありし辺りの曼珠沙華

秋の虹なんと真白き診断書

遺骨より白き骨壺冬の星

葬りし人の布団を今日も敷く

早逝の残像として熱帯魚

少年の何処を切っても草いきれ

手鏡を通り抜けたる螢の火

この空の蒼さはどうだ原爆忌

蛇衣を脱ぐ戦争へ行ってくる

秋の灯に鉛筆で書く遺言状

たましいを集めて春の深海魚

三月十一日に繋がっている黒電話

缶蹴りの鬼のままにて卒業す

水撒けば人の形の終戦日

心臓の少し壊死して葛湯吹く

ポケットに妻の骨あり春の虹

 

「跋」林誠司(「海光」代表)によれば、猛虎氏は大胆さと繊細さが入り交じる、詩情あり、ユーモアありの多彩な作品で、深みのある詩情を持っている。

芭蕉も「俳諧の益は俗語を正す也」(『三冊子』)と述べていて、彼の作品にはその伝統が引き継がれて、ひいては俳句の現代性を生み出している。

「あとがき」に、趣味でやっていた作詞作曲、その歌詞からイメージした作句は、句会で同僚の作句を圧倒し、とても気分がよかった、いっている。

(俳句アトラス 2400円(税込))

 

―「好日」2020年9月号 新著紹介 執筆・片岡伊つ美―

 

 

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