辻村麻乃句集『るん』が「爽樹」誌で紹介されました!

辻村麻乃句集『るん』

平成30年7月 俳句アトラス刊

 

鳩吹きて柞の森にるんの吹く

 

あとがきによれば、句集名はこの句によるとある。

また「プラーナは、サンスクリットで呼吸、息吹などを意味する言葉である。日本語では気息と訳されることが多い。チベット仏教の瑜伽行では、この概念は『ルン(風)』と呼ばれる。」とウィキペディアよりの出典と記している。

 

「鳩吹く」は、鹿狩りに際して鳩の鳴き声をすることであるから、今、鹿狩りが始まるのであろう。

森にはが林立する。

「ははそ」とは、͡コナラ・クヌギ等の総称の意味と共に、母を意味すると広辞苑にあり、謡曲竹雪の「秩父の山秋はてぬれば柞の森」が例示されている。

継子いじめにあった息子が実母を訪ねて行く。

母の住む森は、鹿の多く住む森でもある。

能の竹雪からしても「鳩吹く」と「柞」は結びつく。

この句は氏の母恋の句であろう。

母親で、俳人である岡田志乃さへの想いを込めた句であろう。

 

筆者がもっとも風を感じるのは、次の句である。

 

鷹匠の風を切り出す脚絆かな

 

チベット仏教の風はプラーナとどのように相違するのか詳細には不明であるが、命につながる風の動きの意であるプラーナは、鷹匠の技に感じられるように思う。

鷹匠は狩のために鷹を育てて鷹狩りに備える。

そして本番でその成果を示さなければならない。

確実に、少しの隙もなく、鷹に狩をさせなければならない。

迫力を示すのは鷹であるが、その仕込みは、キリリと巻いた脚絆にあり、脚絆から「風を切り出す」とした見事さに魅せられる。

 

昭和39年東京都生まれ 「篠」編集長、副主宰

 

~「爽樹」2018年11月号~句集逍遥(6) 執筆:田中妙子~

 

※本句集をご紹介いただいた「爽樹」発行所、田中様に心より御礼申しげます。  俳句アトラス

 

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