長生きを生業として春の象 佐藤 日田路『不存在証明』俳句アトラス
「香天」2020年2月号~ギャラリー
長生きを生業として春の象 佐藤 日田路『不存在証明』俳句アトラス
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「桟雲」新年句会
【日 時】2020年1月12日(日)
【新年句会会場】大宮ソニックシティ(埼玉県さいたま市)
◎司会 佐久間 つぐみ
〇開会
〇代表挨拶 清水 山彦
〇句会
〇披講
〇選評 清水 山彦
選評 清水山彦代表
【懇親会・表彰式】Amore大宮
〇新人賞表彰
新人賞表彰
〇各句会紹介
〇落語
〇詩吟
〇閉会
「葛の花」は中野貴美さん(青海波同人)の第2句集である。
句集は名詞止めの一元俳句を主とし、古語を効率よく使うなど本格的で安定感がある。
七草やはるけきものに母のこゑ
白扇や父の匂ひの古語辞典
父母の句を挙げたが、はるかになった母の声を靄のような七草がゆと取り合わせて慕情を醸し出し、父を古語辞典の匂いと言い切ってかくしゃくしたる父像を浮かび上がらせる。
二句一章名詞止めの形式が父母の誠実さを表出する。
著者の優しさや古語への造詣の原点が見える。
能面の口中くらき春の燭
写実でありながらどこか心象的なのは、口中の闇から能面の美しさを発見したところにある。
著者の耽美への憧れだろうか。
うれしいときうれしいやうにさくらさく
珍しく形容詞を重ね、心を解き放った句である。
時にはこんな遊び心のある句も楽しくていい。
徳島新聞2019年12月21日(土)「句集を読む」
執筆:上窪青樹(「風嶺」主宰)
伊丹市在住で、「天香」(岡田耕治代表)同人の第1句集。
句集の中の〈秋出水鴨横向きに流さるる〉は、大江健三郎「自分の木の下で」の大水に流されてゆく家の屋根に乗っている少女のシーンを思い起こした、と書いて渡邉に送ったら大江の書を読んでみるという。句集を改めて読んでみると好きな句が80句近くあった。どれも捨てがたく、特に後半はさすがと思わせる句ばかり。
けむり茸踏んで花野のど真ん中
春暁を耳さとくゐる島泊まり
鹿の子の耳ふるはせて立つところ
花びらの中に目覚めしなめくじり
月の出や母在るやうに魚を煮て
龍淵に潜む卵の特売日
庖丁の柄を買うてくる小六月
うつぼかづらに誘はれてゐる花の昼
「けむり茸」の句は、踏まれて煙のような胞子を吹きだした。その胞子が、秋の花野に広がってやがて煙茸ばかりになるような恐怖も少し。「春暁」の句は明るむのを視覚的に言わず「耳さとく」としたのに独自性が光る。島に泊まった非日常の明け方の、寝付けない床で漁師などの動きだす気配を鋭く感じ取ったのだろう。
「鹿の子」はよたよたと立つが、それを言わず子鹿の耳に目を付けた。子鹿がこの世に生まれ出て初めて聞く母の鼓動とは違う音をふるわせながら聞く。「龍淵に潜む」の龍は、春分に天に昇り、秋分に淵に潜む、との言われから秋の季語となったもの。句は龍の季語の誘導で、作者も爬虫類のような感覚になって卵を見つめているのかも。「小六月」の句は、収穫祭でかぼちゃを切っていて柄が割れたか折れたかしたのだろう。「うつぼかづら」は、その匂いに、虫か何かに変身させられて呑み込まれていくような妖艶な句。
どれも句の表面にでない物語をにおわせる独特の感覚が魅力。「序文」はふけとしこ、「跋」は内田美紗。俳句アトラス刊。
神戸新聞2019年11月26日(火)「句集」 執筆:山田六甲
ジャズ流るニューオリンズの牡蠣を割る 菊地悠太
菊地悠太は三十五歳。
ニューオリンズのバーボンストリートへ行ったんだよな。
デキシーランドジャズの店がずらりと並んでプープカヅージャガ生演奏している。
で、牡蠣を割って食べた、と。
名物だもんね。
あと、小さな鰐の料理もあって、ニューオリンズは一晩中をはしごして騒ぐワンダーランド。
序句に角川春樹「麦酒あり菊地悠太の詩を愛す」の激励句が献呈されている。
句集『BARの椅子』(平成31年・俳句アトラス)
週刊新潮「新々句歌歳時記」2019年11月28日初霜増大号 執筆:嵐山光三郎
「円虹」300号祝賀会 山田佳乃主宰挨拶
【日 時】2019年11月30日(土)
【会 場】兵庫県神戸市 ポートピアホテル
◎司会 吉村玲子
〇開 会
〇民謡演奏 今野響 他
〇主宰挨拶 山田佳乃
〇主賓祝辞 稲畑汀子(日本伝統俳句協会会長)
稲畑廣太郎(「ホトトギス」主宰)
〇来賓祝辞 宇多喜代子
大輪靖宏
〇来賓紹介
〇乾 杯 大久保白村
〇来賓挨拶 三村純也
井上弘美
木割大雄
〇「円虹賞」授賞式
〇オペラ独唱 髙丸真里
〇花束贈呈
〇閉会の辞 辻 桂湖
辻村麻乃さん(右)、岩淵喜代子さん(左)
【日 時】2019年11月16日(土)17時~
【会 場】東京都港区六本木 ロッポンギフラット
〇挨拶 辻村 麻乃
〇『るん』朗読 辻村 麻乃
〇『るん』の背景 辻村 麻乃
〇俳句を詠むことについて 林 誠司 (聞き手)辻村 麻乃
〇フリートーク・質問
『山懐』(俳句アトラス)は新谷壯夫の第一句集。
平成18年から30年までの、341句を収録。
光堂出て五月雨の中にをり
昏れてなほ鉾の長刀光りけり
簡潔な叙法による軽やかで硬質な風趣。
二句ともに、印象的な「光」が体感される。
鉄棒に真つ直ぐ駆けて入学す
傘の波高く低くと牡丹守る
大方は裏返りたり朴落葉
「真つ直ぐ」「高く低く」「大方は」の措辞が生動している。
力感の動き、方向の描出によって、見慣れたはずの景が印象的に立ち上がる。
神農祭屋台のくすり売れてをり
万緑や吊橋渡る順きまる
出来事を描いた二句だが、景としても味わい深い。
季語「神農祭」「万緑」の、多重なイメージ喚起力の働きだ。
洛外やみどりの囲む朱の社
鮎落ちて尖る瀬の音風の音
色の対照、音の並列。
実景に蔵された質感が、大胆に鮮やかに造形化されている。
昭和16年兵庫県生まれ。
大阪府枚方市在住。
「鳰の子」同人。
京都新聞2019年10月21日(月)「詩歌の本棚」(新刊評) 執筆:彌榮浩樹
月光が降る曼陀羅となりて降る 増成栗人
香具山の平らかな日の袋掛 荒川心星
ものかげの移りてゐたり昼寝覚め 半谷洋子
木洩日に育てられたる梨を剝く 谷口摩耶
増成栗人主宰の「鴻」の第13回全国俳句大会が行われ、地元・千葉や東京、宮城や兵庫など、多くの会員が参加し、盛大に挙行された。
ゲストは藤井稜雨氏(「風の道」同人、千葉県会議員)、平山雄一氏(俳人、音楽評論家)、林誠司。
主宰は、あいさつの中で、現在開催中のラグビーワールドカップによって注目された「one for all」「all for one」を紹介し、俳句や結社を含むすべてに通じる言葉だ、と述べ、一人一人の研鑽が結社全体の力になる、今後も互いに助け合い、結社を盛り上げてゆこう、と述べた。
【日 時】 2019年10月27日(日)
【会 場】 千葉県市川市・市川グランドホテル
主宰挨拶の増成栗人「鴻」主宰
書家で俳人の伊藤隆氏(中央)の篆書教室も行われた。