渡辺政子句集『修二会』上梓祝賀会

左より渡辺政子、茨木和生、朝妻力各氏

 

修二会果て矢来の竹の堆し    渡辺政子(句集『修二会』より)

 

渡辺政子「雲の峰」同人の第一句集『修二会』(俳句アトラス刊)の上梓祝賀会が行われた。

当日は、朝妻力「雲の峰」主宰、茨木和生「運河」主宰はじめ、「雲の峰」の40名が参加し、祝辞や詩吟、出し物などを披露し、賑やかに行われた。

 

日 時:2019年9月27日(金)12時~

会 場:奈良県東吉野村 天好園大広間

 

【式次第】

・開会の辞

・主宰挨拶  朝妻 力「雲の峰」主宰

・祝 辞   茨木和生「運河」主宰、林誠司「俳句アトラス」代表

       浅川 正「雲の峰」副主宰

・花束贈呈

・乾 杯

・歓 談

・祝 辞   「雲の峰」同人、会員諸氏

・謝 辞   渡辺政子

・閉会の辞

 

 

成瀨喜代句集『東路』が「海」で紹介されました!

 

 

句集『東路』 成瀨 喜代

 

昭和2年千葉県生まれ、同57年「蘭」入会、平成5年「蘭」同人。

名誉主宰松浦加古氏の序によれば、作者は、野澤節子健在の頃の「蘭」に入会した最古参の一人。

現在91歳。

 

この句集のメインテーマは、

  1. 生涯の文芸の師と仰ぐ野澤節子への格別の思慕
  2. 作者の住む成田市名古屋の風景、とりわけ作者の自宅の前にある小御門神社の美しい聖域
  3. 夫との生活、更に夫亡きあとの思慕

の三つである。

句集名「東路」は、作者の先祖がその創建に携わった「小御門神社」のご祭神太政大臣藤原師賢の歌、

 

東路やとこよの外に旅寝して憂き身はさそな思ふ行く末

 

に因む。

 

句集帯掲載句より10句

 利根川を去るきつかけの嚏かな

 白鳥引く藍の深きを湖に置き

 われに添ふ師の影さくら咲きてより

 亡き夫に謝すことばかり天の川

 待つといふ心の張りや牡丹の芽

 影もまた匂うてをりぬ梅林

 身に入むやおはすごとく置く男靴

 二度訣かるる思ひに捨つる白絣

 星月夜あふぎ逢ひたき人あまた

 

(俳句アトラス 2,315円+税)

 

「海」令和元年9月号 「新刊句集紹介」(執筆・後藤勝久)

 

 

辻村麻乃句集『るん』が「枻」で紹介されました!

 

 

家族とも裸族ともなり冷奴   辻村 麻乃

働かぬ蟻ゐて駅前喫茶店

嫉妬てふ限りなきものサングラス

 

辻村麻乃句集『るん』 俳句アトラス刊

 

第二句集。

『るん』はルンという言葉の概念に依る。

詩人の岡田隆彦、俳人の岡田史乃の間に生まれ、新しい風を吹いても良いのではと思うようになったと。

発想がどこへ跳んでゆくか予測出来ない作家である。

 

一句目、クーラーが普及する以前の典型的な日本の夏。

夕焼空、豆腐屋のラッパ、蚊取線香。

ステテコやアッパパ姿の家族で囲む夕餉。

冷奴の涼しさと、たっぷりの会話もこれ以上なきご馳走。

「家族」「裸族」のリズムが楽しい一句。

 

二句目、茹だるような真夏の昼間。

冷房の効いた喫茶店で束の間の休息を取るサラリーマン諸氏。

個々の集まりが大きな群となり、やがて堅固な社会を作り上げてゆく過程の中、次のステップへのエネルギーを蓄える貴重な時間。

身近な蟻に譬え、少々の揶揄を込めた励ましの句と受け止める。

 

三句目、ハートのある生物にとって逃れられないネガティブな感情。

善悪、教養の有無に関係なく、軽いものから根深いものまで、置かれた立場により千差万別。

忌わしいイジメも嫉妬が発端という。

回避は困難だが、まず他との比較をやめ、努めてやるべき事に集中する。

猶且つ、煩悩に苛まれるなら、嫉妬の炎に燃える眼を洒落たシャネルやレイバンのサングラスに閉じ込め、真夏の太陽に身を焦がせよう。

 

「枻」令和元年9月号「現代俳句を読む」(執筆・高成田満理子)

 

 

新谷壯夫句集『山懐』が「対岸」で紹介されました!

 

 

水狂言いよよ山場の鯉つかみ    新谷 壯夫(第一句集『山懐』より)

 

作者は楽しみで作句しているに違いない、想像できる句集である。

ちなみに、本句集の装丁原画は奥様の作とのこと。

羨ましいかぎりである。

さて、博識であることは俳句にとって妨げにはならぬ。

掲句も季語の知識を韜晦などせず、おおらかに用いている。

「鯉つかみ」は歌舞伎の演目であるが、筆者も、幼い頃、木下サーカスで、太夫の扇子で噴水する「水からくり」を見た記憶がある。

あれも「水狂言」の一つだったのか。

氏は「鳰の子」創刊同人。

 

「対岸」2019年9月号「平成俳句論考」(執筆・池内雅一)

 

新谷壯夫句集『山懐』が神戸新聞で紹介されました!

 

1941(昭和16)年兵庫県生まれ、「鳰の子」同人会長としての第1句集。

2006年から18年までの341句を収録。

定年退職後、会社の先輩に誘われ気軽に始めたという。

外国を訪れたり、山に登ったりして経験によってもたらされた句が多い。

 

  熊棚を残して栃の芽吹き初む
  鉄棒に真つすぐ駆けて入学す
  日照雨きて大山蓮華咲き初むる
  蛸漁の舟動かざる凪の海

 

これらは初期の作品だがすでに俳人として力が垣間見える。

もっとも調子の上がった作品は13から14年ごろだろう。

それらの作品中、

 

  霧巻くや翁も難儀の月の山
  先づもつて猫を探しぬ涅槃絵図
  左手のしたたり絶えぬ甘茶仏
  葉桜となりて雑木に紛れこむ
  一切の音を消し去り瀧の落つ

 

などに注目した。

月の山とは月山のことで「奥の細道」の旅で芭蕉が「息は絶え、体は凍えて、ようやく頂上にたどり着く」と書いたように難儀して登った山。

作者は、山男の私でさえ霧に難儀をしていますよ、とあいさつしたのだ。

「涅槃図」の句は猫が描いてあるかどうか、目を凝らしているところ。

理由は諸説あるが、ほとんどの涅槃図には猫は描かれてない。

京都の東福寺、真如堂では猫入り涅槃図が見られるという。
「甘茶仏」は4月8日の花まつり。

仏の右手は天を指しているから甘茶は下を向いている左手を滴るという気づきの句。

「葉桜―」は、花のない桜はただの雑木になってしまったよ、という捉え方が面白い。

「滝」の句では、滝の轟音が周囲の音を一切かき消しているという、音のパラドックスを詠んだ。

最近の作品では、

 

  日本とはと問ひなほされる菜の花忌
  フクシマや見る人のなき花辛夷

 

 など。

「菜の花忌」とは司馬遼太郎の忌日。

「フクシマ」は福島原発事故。社会性の句も詠む。

「鳰の子」俳句会(柴田多鶴子主宰)が俳壇に初めて送り出した俳人。

俳句アトラス刊。

「神戸新聞」~「句集」自然や社会を詠む(2019・9・24)(執筆・山田六甲)  
 
             

加藤房子(「千種」代表)句集『須臾の夢』第21回横浜俳話会大賞受賞!

 

小社刊行第一号の句集、加藤房子句集『須臾の夢』が第21回横浜俳話会大賞を受賞しました。

横浜俳話会とは?←

 

授賞式は下記の予定で開催されます。

【日 時】2019年10月14日(月・祝)体育の日 12時~

【会 場】かながわ県民センター 2階ホール

     神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-24-2

     ※横浜駅より徒歩5分 

 

第15回日本詩歌句協会授賞式

日時:2019年9月22日(日)

会場:東京都北区王子・北とぴあ

 

※俳句関連のみ紹介

第1部 

日本詩歌句随筆評論大賞授賞式

俳句部門(選考委員:大久保白村・大高霧海・平田繭子)

大賞     佐々木一馬句集『御霊』

俳句四季賞  山田 牧句集『星屑珈琲店』

特別賞    辻村麻乃句集『るん』(俳句アトラス刊)

奨励賞    中村幸子句集『烏柄杓』

 

日本詩歌句随筆評論協会賞

俳句部門(選考委員:大久保白村・大高霧海・平田繭子)

協会賞  菊地晃子「初雪」

奨励賞  小西月舟「琵琶湖逍遥」

努力賞  木幡忠文「音」

第2部 記念講演 「芭蕉雑感」大高霧海「風の道」主宰

第3部 祝賀・懇親会

 

福島たけし句集『寒オリオン』が「残心」で紹介されました!

 

1951年9月14日東京生まれ。
俳句を森澄雄、小林康治、中村俊定に学ぶ。
「林」創刊より参加、小林康治に師事。
俳人協会会員、俳文学会会員。

句集『寒オリオン』は、作者の第四句集にあたる。
あとがきで、冬の星座は美しい、中でもオリオン座が好きと書いてある。
このことは作者のお人柄、句柄に通ずる気がする。
平明な中の品格、静かな表現の奥に感じられる作者の強く澄んだ意志。
そして、対象に対する眼差しの優しさに心惹かれる。

大杉を見に炎天の大花野
葉桜や飾るものなき略年譜
冬椿飾らぬ人の最も艶
掌の中の家宮氷の冷たさに
土偶まだ眠たき眼楤芽吹く
新年の曲は渦巻くワルツより
犬猫の厄年いくつ式部の実
左義長の炎の先の男女神
冬菫木漏れ日を得て意志の色

 

(2019年7月30日刊 俳句アトラス)

 

―「残心」2019年第17号 受贈句集より(執筆・西田啓子)―

 

加藤房子句集『須臾の夢』が「繪硝子」で紹介されました!

 

加藤房子著『須臾の夢』

 

集中「八咫烏」の項の中では、

 

山上の一樹序の舞紅枝垂桜

西行の命終の夜の花あかり

地の魑魅呼びて変化の老枝垂桜

 

と、桜花の美しさと、観る位置によっては妖艶とも映る様が詠まれている。

「生成り女」の項では、

 

遺影いま考の声降る春の星

母逝きしあとの闇夜を桜狩

 

と、父へ母への深い思慕の念が詠まれ、「狐雨」の項の中では、

 

天の声地の声舞楽始めかな

忘却の闇に齢古る雛ならむ

月へ飛ぶロケット野心青々と

 

と、舞楽と雛の雅を詠む一方、科学的な言葉を採った句も散見され、楽しめた。

また、「張子の兎」の項の中では、

 

玄室の朱雀を犯す黴の糸

惜命の朝の茜や神帰る

 

と、歴史に纏わる世界へと誘う句に出会え、四項の「風来坊」の中では、

 

音もなく一病と棲む春障子

一病は余生の福音大旦

半夏生すでに白旗身の内に

 

など、病を克服し、その後の日常を明るさをもって詠まれており、最後には、

 

楽しとは生涯未完亀鳴けり

 

と、泰然とした心境を吐露し、結んでいる。

著者の益々御健勝を祈念します。

 

―「繪硝子」2019年2月号 「句集を読む」(執筆・平野暢行)―