
句 集:若 菜(わかな)
著 者:小宮 澄江(こみや・すみえ)
竹竿を空に廻して栗落とす
俳句の楽しさ苦しさをあじわいながら今日に至りました。
米寿を迎え、今まで生きてきた証として
句集を遺すのが最高の遺品だと考えました。
-「あとがき」より-
序文:林 誠司
収録句より
雨ふりて女人高野のとろろ汁
百選の水つめこんで山笑ふ
山鳩のくぐもる声や良寛忌
濡れながら光つてをりぬ甘茶仏
川に散り川へせり出す冬紅葉
吊し雛雀も貝も子ねずみも
春うららファミレスにある授乳室
吊橋や瀞にたゆたふ花の塵
放たれて鳩はみ空へ敗戦忌
ふるるたび仏間の桜こぼれけり
リラ冷えや米寿に届くファッション誌
歳時記の角すりきれて年暮るる
私家版
【著者略歴】
埼玉県日高市在住
昭和8年 埼玉県狭山市生まれ
平成21年より作句、「海」に入会
平成30年 「海」同人
令和3年 俳人協会会員
令和4年 「海」退会
平成24年 日高市文化祭俳句大会にて市議会議長賞
令和4年 日高市文化祭俳句大会にて市議会議長賞
現在、「星雲句会」(会長・佐藤隆夫氏)「梅句会」(指導・水村治雄氏)に所属

句 集:懺悔室(ざんげしつ)
著 者:松本 余一(まつもと・よいち)
薄情の世に慣れてをり甘茶仏
私は前向きに、あるいは楽しい人生を目標に、「生きていてよかったと思える老後」のために、生きて来たので決してない。選ぶ余地のない、仕方のない、そしてぎりぎりなところを生きてきた、と言ったほうが当たっている。
ー「あとがき」よりー
収録句より
死ぬ前にみんな笑うて花の雲
啓蟄やみんな三十七度五分
不登校は勇気要ること葱坊主
水筒のつめたい緑茶夏期講座
矢車や夜は星座を駆けめぐり
炎天下まだけりつかぬまま訃報
君すでに寝たきりとなる花野かな
残菊や好きに咲いたら好きにしろ
鷹の目に水の星だとわかるまで
友だちは女性ばかりや枇杷の花
早梅や自分のことで精一杯
日溜りは余生の為に野水仙
ISBN978-4-909672-33-9 定価2,750円(税込)
跋文:林 誠司
【著者略歴】
本名・成雄 東京都小金井市在住
昭和14年 東京都小金井市生まれ
昭和37年 青山学院大学文学部英文科卒
平成29年 NHK学園「土曜俳句教室」受講、「ひろそ火」入会、木暮陶句郎に師事
平成31年 第20回NHK全国俳句大会 入選
令和2年 第8回ひろそ火賞 佳作
第21回NHK全国俳句大会 秀作
第23回夢二俳句大会 上毛新聞社賞
令和3年 第9回ひろそ火賞 佳作
第22回NHK全国俳句大会 入選
「海光」入会、林誠司に師事
句集『言霊』刊行
令和4年 句集『ふたつの部屋』『言霊Ⅱ』刊行

句 集:曙光のガレ場(しょこうのがれば)
著 者:野田 冷峰(のだ・れいほう)
シングルマザーつかず離れずお月さん
冷峰さんが生み出す一連の作品は、現代における社会性俳句と言っていい。
社会性俳句を定義することは難しいが、彼の作品には、戦争・原爆・事件・格差社会・生活困窮・過疎化など、あらゆる社会問題や不条理に関心を持ち、事件記者としての鋭い視線と、市井人としての優しさの融合をもって詠いあげる、豊かで切ない詩情が顕著である。 ―林 誠司―
【収録句より】
子を連れて詫びたあの日の月夜かな
エノラゲイ雲間に見ゆる聖夜かな
夜食にも一行詩あり子らの飢
夏山の移動販売婆が待つ
黒葡萄刑執行の房重し
非正規を生きてサクサク霜柱
三十年御巣鷹の尾根露しぐれ
君が代にそむく一輪菫咲く
つまずけば呼ばるる思い秋彼岸
山茶花や妻在りし日も逝きし日も
波照間の水平線に銀河澄む
身に入むや弾圧史碑に蝌蚪一匹
敗戦日現人神の罪と罰
ISBN978-4-909672-31-5 定価2,750円(税込)
【著者略歴】
東京都東久留米市在住 本名:幸雄(ゆきお)
1942年 東京都豊島区池袋生まれ
1961年 日本経済新聞社入社 編集局工業部中小企業課配属、商店街担当記者
1966年 社会部に転属、事件記者
以来、記者生活30有余年を主に事件取材で過ごす。
1995年 法務室長
2000年 役員待遇
2006年 定年退職
俳句は1997年よりスタート。
日経社会部OB句会「酔吟会」に参加、その後「日経俳句会」「番町喜楽会」「谷端川句会」「谷中句会」などに参加。
2016年 俳句愛好誌「海光」(代表:林誠司)に創刊より参加
NPO法人大明理事、「海光」同人

句 集:壺中の蝶(こちゅうのちょう)
著 者:飛鳥 もも(あすか・もも)
この生を詩に咲かせたし柿の花
作者は短い人生を詩的抒情性をもって、自然とともに十七音にこめる。
菜の花は故郷や母の歌声を思い出させ、月を見れば父の魂に話しかける。
しゃぼん玉は残りの生の儚さを象徴する。
水や石は春の光にふくらむ。
作者の詩魂は夢の蝶に化身して、壺中で自由に飛びまわる。
俳句という〝壺中〟に造化の不思議がこめられる。
―坂口昌弘-
【収録句より】
その席は君がかがやく花ミモザ
ひだまりの石のふくらむ桃の花
夢ごこち出入り自由の壺の蝶
頬杖はときに道草春の雪
現し世の光集めてしやぼん玉
昔から君は壺中で遊ぶ蝶
打ち水の乾き月日は飛ぶやうに
水音やあぢさゐの青ふくらます
夫の背やいづれは一人夏蜜柑
忙しいを美学のやうに蟻地獄
引力と浮力の関係夏の恋
白日傘ひらいて今日の翼とす
もう父を召させ給へよ冬椿
ISBN978-4-909672-30-8 定価3,300円(税込)
【著者略歴】
兵庫県川西市在住
1952年3月 大分県日田市出身
現・大分県立日田三隈高等学校卒業
1972年 大阪にて就職
1981年 独立
2014年 退職

句 集:旦夕(たんせき)
著 者:荒川 心星(あらかわ・しんせい)
菊焚いてこの世といふは遊びごと
著者が卒寿という歳月を貫き通して来たものは、詩人としての遊びごころであろうか。逢えば暮らしを語り、夢を語る著者の遊びごころが美しき詩を生み出している。
-増成 栗人「鴻」主宰-
【収録句より】
爽やかにあり一瀑の水こだま
亡き母に語りかけては黒穂抜く
遠きものばかりが見えて螢の夜
百の薔薇咲きゐて百の日向あり
熔岩原を踏めば晩夏の声がする
貝風鈴しんそこ青き月のぼる
澄みきつてをり旧盆の潦
潮騒を聴き手花火を落とし合ふ
棉吹いて吹いて鴻司の忌でありぬ
歩を止めよなづなはこべら咲く辺り
十二月病む妻の手のあたたかし
この家に生れしはむかし麦の秋
ISBN978-4-909672-28-5 定価2,800円(税込)
【著者略歴】
愛知県知立市在住。
1931年 愛知県豊田市に生まれる
1970年 「松籟」入会
1972年 「河」入会
1975年 「松籟」同人
1978年 「河」同人
2006年 「河」退会
2007年 「鴻」入会
2012年 「鴻」蒼韻集同人
現在 俳人協会会員、「松籟」天韻集同人、「鴻」特別顧問、「星の道」主宰
知立市文化協会文化功労賞受賞(2005年)

句 集:ふたつの部屋(ふたつのへや)
著 者:松本 余一(まつもと・よいち)
【序 文】林 誠司「海光」代表
ゲルニカの馬にたづねよ八月来
驚くのは余一さんの俳歴が僅か四年ほどであり、これらの作品群がほぼここ一年の作であることだ。
氏の作品には揺るぎない文学的志が宿っており、作品全体に情熱がみなぎっている。
―林 誠司—
【収録句より】
てのひらが包まれてゐる春日かな
目隠しをほどく手やさし花の雲
うららなり眠るも死ぬも眼鏡とる
風鈴や買ふとき風に好かれたる
森青蛙すこし動いて泡のなか
伊予みかん目の前あがる夏の月
復活はだれにもあつて万年青の実
この川にまぎれてゆけば秋の海
きのふよりけふの松島ななかまど
幸せは大地すれすれ福寿草
リハビリの様子問はるるラクダシャツ
咲いてゐるつもりのなくて返り花
ISBN978-4-909672-27-8 定価2,750円(本体2,500円+税10%)
【著者略歴】
本名・成雄
昭和14年 東京都小金井市生まれ
昭和37年 青山学院大学文学部英文科卒
平成29年 NHK学園「土曜俳句教室」受講、「ひろそ火」入会、木暮陶句郎に師事
平成31年 第20回NHK全国俳句大会 入選
令和2年 第8回ひろそ火賞 佳作
第21回NHK全国俳句大会 秀作
第23回夢二俳句大会 上毛新聞社賞
令和3年 第9回ひろそ火賞 佳作
第22回NHK全国俳句大会 入選
「海光」入会、林誠司に師事
句集『言霊』刊行
《住 所》〒184‐0012 東京都小金井市中町1‐7‐16

句 集:諸葛菜(しょかつさい)
著 者:石田 雨月(いしだ・うげつ)
【序 文】西池 冬扇「ひまわり」主宰
【跋 文】西池みどり「ひまわり」副主宰
両切りのピース吸いいし夏野かな
風雅の誠の求道者・石田雨月さんは情の人であり、家族愛にみちた人である。
庶民の気持ちを格調をもって詠じる風流師である。
ますます自由の境地で句の世界を広げていってほしい。
-西池 冬扇-
【収録句より】
踊り子に余寒の舞台回りけり
サッカーの傷を洗えば鳥わたる
病棟にたれか笛吹く秋の暮
なお白し霧のゆくえの男郎花
雪折れの赤松ならん無言館
春の夜の絵皿に試す墨の色
柔道着無口にたたみ夏終る
大塔へ寺の傘借る花の雨
昨日今日とつなぐ命や梅白し
鳴き龍を鳴かせ我が子と秋惜む
ISBN978-4-909672-25-4 定価2,500円(税込)
【著者略歴】
本名・秀憲(ひでのり)
昭和22年8月 徳島県鳴門市撫養町に生まれる
昭和59年6月 「ひまわり」俳句会入会、高井北杜先生に師事
平成8年5月 西池冬扇、みどり両先生に師事
《現 在》 「ひまわり」幹部同人 俳人協会会員
《連絡先》 〒771-0360 徳島県鳴門市瀬戸町明神字下本城207

句 集:光の靴(ひかりのくつ)
著 者:大木 雪香(おおき・せつか) 第一句集
【序 文】渡辺 誠一郎「小熊座」編集長
薫風やテトラポッドの半乾き
彼女の俳句が、他の俳人の作品とは明らかに違ってみえた。
どこか危なっかしい言葉の斡旋が逆に新鮮だった。
―渡辺 誠一郎(序に代えてより抜粋)―
【自選十句】
初鰹海から放り出されけり
星同士くつつきさうな熱帯夜
水揚げの鰯吐かるる太さかな
秋天をぐるぐる廻すいろは坂
きのふより胸のふくよか菊人形
冬紅葉日本語でしか言へぬ色
太陽から逃げ出すやうにスキーヤー
山茶花や箒の音のたてよこに
春の波とろりと靴を襲ひ来る
まつすぐに街は展けて花水木
ISBN978-4-909672-23-0 定価2,400円(本体2,182円+税10%)
【著者略歴】
大木 雪香(おおき・せつか)
本名:大木 深雪(おおき・みゆき)
1973年 千葉県松戸市生まれ
2003年 「埋み火の会」入会(指導 剱持 靖子)
2013年 第4回北斗賞第2位
2016年 「海光」入会(代表 林 誠司)
2017年 「海光」編集長
2020年 第16回日本詩歌句随筆評論協会賞4部門受賞
詩部門:奨励賞 短歌部門:優良賞 俳句部門:奨励賞 随筆部門:協会賞
2021年 「青垣」入会(代表 大島 雄作)
《現 在》「海光」編集長、「青垣」会員、「埋み火の会」会員、俳人協会会員
《メール》imomushi_smile092012070107@yahoo.co.jp
神奈川県川崎市在住

句 集:オー・ソレ・ミオ
著 者:角川 春樹(かどかわ・はるき)
たんぽぽのぽぽを抱きしめオー・ソレ・ミオ
私にとって詩歌とは「いのち」と「たましひ」の器であり、「永遠の今」を詠うことだと確信している。
―角川春樹(あとがきより)―
【収録句より】
一行の詩に生かされて花行脚
ゆく春やあられ泛きたる鯛茶漬
敗戦日そして、それから本生まる
卒園の空に吾子ありオー・ソレ・ミオ
鱈汁にいのちぬくもる家族の灯
子はいつか父を超えゆく龍の玉
深吉野の天へつらなる花廻廊
子と歩く今日あたらしき靴白し
妻と子と源義の月を仰ぎけり
寄せ鍋や詩歌(うた)は生活(たつき)の中にあり
父として生きたし吾子に屠蘇を注ぐ
魚は氷に上り沖には未来あり
あんず酸つぱい吾子の笑顔がきれい
ISBN978-4-909672-22-3 定価2,750円(本体2,500円+税10%)
【著者略歴】
角川 春樹
昭和17年1月8日富山県生まれ。
國學院大學卒業。
父・源義が創業した角川書店を継承し、出版界に大きなムーブメントを起こす。抒情性の恢復を提唱する俳句結社誌「河」を引き継ぎ、主宰として後進の指導、育成に力を注ぐ。平成18年日本一行詩協会を設立し、「魂の一行詩」運動を展開。
句集に『カエサルの地』『信長の首』(芸術選奨文部大臣新人賞・俳人協会新人賞)、『流され王』(読売文学賞)、『花咲爺』(蛇笏賞)、『檻』『存在と時間』『いのちの緒』『海鼠の日』(山本健吉賞)、『JAPAN』(加藤郁乎賞)、『男たちのブルース』『白鳥忌』『夕鶴忌』『健次はまだか』『源義の日』など。
著作に『「いのち」の思想』『詩の真実』『叛逆の十七文字』『角川源義の百句』、編著に『現代俳句歳時記』『季寄せ』など多数。
俳誌「河」主宰、角川春樹事務所社長。

句 集:ヒヤシンス
著 者:杉原 青二(すぎはら・せいじ) 第一句集
【序 文】 中村 猛虎「亜流里」代表
【跋 文】 林 誠司「海光」代表
理科室の光歪めるヒヤシンス
これまでの句をまとめて、まずは記録に残しておこう。その上で捨て去り、次のステップに進んでいこう。自分のDNAに嵌るスタイルを模索し、だれも見たことのない俳句の世界を見てみたい。
―杉原 青二(あとがきより抜粋)―
【収録句より】
遊べよとばかりに引きし彼岸潮
三代のふぐりを見たる扇風機
蛇泳ぐ川面にエノラ・ゲイの影
蛍火か骨片かもうわからない
月読の陰に蛍が棲んでゐた
沢蟹を怒らせてゐる男かな
母逝きぬ金魚のごとく化粧して
包丁を入れても笑ふ鯰かな
万緑の山へ指呼する転轍手
鷹柱熊野古道は海に入る
妻帰る雪の匂ひをつけてきて
沼涸れて地下に帝国あるごとし
ISBN978-4-909672-26-1 定価:2,500円(本体2,273円+税10%)
【著者略歴】
本名:杉原 基弘(すぎはら・もとひろ)
昭和31年生まれ。
兵庫県立龍野高等学校卒。
同志社大学法学部法律学科卒。
兵庫県庁勤務(中播磨県民局県民室長、県立大学事務局副局長、防災企画局長、監査事務局長などを歴任)
学校法人行吉学園理事兼総務部長
平成22年 句会「亜流里」入会
平成24年 句会「ブラン」入会
現代俳句協会会員。
兵庫県たつの市在住