鱈の海濁るは春の来つつあり 福永耕二(ふくなが・こうじ)
(たらのうみ にごるははるの きつつあり)
「鱈」は冬の季語で、寒冷な海に生息する。
「鱈の海」とは東北、北陸あたりの日本海沿岸の海であろう。
この句の良さは「濁る」の一語であろう。
普通、春が近づけば、海がかがやくものである。
しかし、この海は「濁る」のである。
逆説的な表現によって、豊潤の海を表現することに成功した。
福永耕二は「馬酔木」編集長、「沖」同人として活躍し、水原秋櫻子に、
石田波郷の再来
と評価された逸材だったが、若くして亡くなった。
存命であれば今、80歳。
俳壇の重鎮として活躍していたことだろう。