春近き銀座の空を鴎飛ぶ 大谷句仏(おおたに・くぶつ)
(はるちかき ぎんざのそらを かもめとぶ)
大谷句仏は、大谷光演(おおたに・こうえん)で明治から大正にかけての浄土真宗の僧侶。
京都東本願寺第23代の法主である。
俳句は正岡子規、高浜虚子に学び、のちに独自の俳句の道を進んだ。
余談だが、東本願寺にしても、西本願寺にしても、法主は今も蓮如の子孫が継承している(…はずである)。
ということは「蓮如」の子孫ということになるだろう。
掲句。
まず、句の鑑賞より、銀座に鴎が飛んでいた、という風景に感嘆する。
今はそういう景色を見ることは出来ない。
考えてみれば昔、銀座から先は「海」だった。
海はどんどん奥へ奥へ埋め立てられていった。
銀座の先の「晴海」あたりに行けば、なんとなく「海の気配」を感じるが、いまや銀座に「海の気配」はない。
「銀座に鴎が飛んでいる」という景色が明るい。
おそらく私だけではないと思うが、「春近し」「春隣」などと聞くと、なんとなくウキウキした気分になる。
冬は冬でいいものだが、この寒さを考えると、春がもうすぐ…と思うと、明るい気分になる。
掲句はその情景が季語「春近し」とよく響き合っている。
「新宿」「渋谷」「池袋」など他の地と比べ、「銀座」には清潔感、高級感がある。
鴎の「白」が似合っている、と言っていいだろう。