剥かれたる牡蠣の白さをなほ洗ふ 花田 春兆
(むかれたる かきのしろさを なおあらう)
「牡蠣」というと、冬の海産物を代表する貝だが、最近は夏、「岩ガキ」が食べられる。
これがおいしい。
秋田県象潟で岩ガキを食べた時、地元の業者に、
岩ガキと牡蠣の違いは何ですか?
と聞いたら、「岩ガキは天然もの」なのだそうだ。
それだけに漁獲量も漁獲時期も決まっている。
本当かどうかはわからない。
その人(おばあさん)はそう言っていた。
岩ガキだと「生」か「焼き」がうまい。
冬の牡蠣だと「鍋」もいい。
冬の季語「牡蠣」の副題には「牡蠣割女」(かきわりめ)という季語もある。
水揚げは主に男の仕事で、それを剝くのが主に女の仕事である。
牡蠣に限らず貝は雑菌が多い。
貝を割って、真っ白な身が出て来たが、さらに冷たい水をかけ、なお、洗う。
牡蠣の真白き身がさらに白くなってゆく。
冬の冷気の中、その白さは、乾いた空気に瑞々しさが生まれたかのようだ。
一句の中に、冬の冷気、水の瑞々しさ、牡蠣の輝く白が美しい。