火の匂まとひ漢の猟はじめ 加藤 房子
(ひのにおい まとい おとこの りょうはじめ)
季語「猟」(りょう)は野生の鳥、獣を、銃・網・罠などを使って捕獲すること。
類似の季語に「狩」「狩猟」「猟期」「猟犬」「狩場」「猟銃」などがある。
「猟」が冬の季語なのは、秋から冬にかけて渡り鳥が飛来し、獣が餌を求めて人目につきやすいところに現れるから、と言われている。
掲句。
「猟はじめ」とは「猟」の解禁日、または、その頃であるから、普通であれば、まだ「火の匂い」をまとっていない。
しかし、すでに、その漢(おとこ)は「火の匂い」をまとっているのである。
それは、その漢の体そのものに「火の匂い」がまとわりついているからである。
いわば、本能の匂いである。
それを見てとった作者の感覚が鋭い。
(句集『須臾の夢』(俳句アトラス)より
加藤 房子(かとう・ふさこ)
昭和9年生まれ。神奈川県横浜市在住。
「千種」代表、俳人協会会員、横浜俳話会副会長。
句集『須臾の夢』で第21回横浜俳話会俳句大賞受賞。