義士の日のいつとはなしの円座かな 吉田鴻司(よしだ・こうじ)
(ぎしのひの いつとはなしの えんざかな)
旧暦12月14日は大石内蔵助の播磨赤穂の浪士47名が、江戸両国の吉良上野介邸へ討ち入りをした日である。
元禄15年(1702)のことである。
昔はこの時期、必ずどこかのテレビ局がテレビドラマを制作し、放映していたが、私の知る限りでは、今年は一つも放映されていなかった。
時代であろう。
ただ、ちょっと前までは「12月14日」といえば必ずドラマ放映がされ、見ているほうもちょっと食傷気味だったし、製作するほうもネタ切れになっていたような気がする。
今は「小休止」と考えればいいのではないか。
掲句。
「円座」が効果的だし、「いつとはなしの」の表現も心憎い。
酒盛りをしているうち、話に夢中になり、いつのまにか円座を組んで話し込んだ…という風景。
その時ふと、かつて赤穂浪士の討ち入りの密談も、こんな感じだったのではないか、と思ったわけだ。
「円座」という言葉には「絆」を感じる。
初対面の人同士で「円座」は想像しにくい。
作者を考えれば、これはきっと気の知れた仲間たちとの「俳句」に関する熱い議論だったのだろう。
俳句の議論にしても、討ち入りの密談にしても、共通しているのは「熱い志」である。
ところで、この「義士の日」だが、先ほども言ったように「12月14日」であり、他に「義士会」「討ち入りの日」などとも言う。
似たような季語に
義士祭
というのがある。
これは「春」の季語で、4月1日から7日まで、赤穂浪士の墓がある港区泉岳寺で行われる行事である。
よく混同して、この時期に「義士祭」として、句を出す人がいるので、句会でも注意してきたが、最近は、12月14日を「義士祭」とする場合もある。
なにより、泉岳寺自体が12月14日に「義士祭」を開催するようになったのだ。
また、人から聞いた話だが、兵庫県赤穂市でも12月14日に「義士祭」を開催しているらしい。
そうなると「義士祭」も12月14日と考えても間違いではなくなってきた。
季語も少しずつ変わってゆくのだろう。