八ツ手咲け若き妻ある愉しさに 中村草田男
(やつでさけ わかきつまある たのしさに)
最近は「シクラメン」「ポインセチア」など、冬でも目を楽しませてくれる草花が増えた。
…が、本来、冬は花のとぼしい季節である。
そんな中、(必ずしもそうではないが…)冬の日差しを浴びて咲いているのが花八つ手である。
草田男の結婚に関するエピソードは面白い。
俳人協会編の「脚注名句シリーズ 中村草田男」(だったと思うが…)にいくつか紹介されている。
今、その本が見つからないので、うろ覚えで書くが、草田男は10回以上の見合いをした、という。
そして最後に出会ったのが「直子夫人」であった。
ご息女の中村弓子さんに聞いた話だと思うが、お見合いの次の日、草田男は直子宅を突然訪れ、両親や直子さんに熱烈に結婚を申し込んだ、という。
この句は、
咲け
という言葉がいい。
心が豊かに弾んでいる。
とはいえ、冬の花八つ手である。
向日葵や薔薇ではない。
どこか静かに幸福を噛みしめている作者の心の安らぎも伺える。
この半年後だが、所用で家を空けた妻へ、草田男は、
妻二タ夜あらず二タ夜の天の川
の名吟を送った。