葛切や少しあまりし旅の刻(とき) 草間時彦(くさま・ときひこ)
葛切は葛粉を水で溶かし、型に入れて加熱し、板状に固めたものを麺のように細長く切ったもの。
「寒天」は天草などの海草を煮詰めたゼリー状のものを冷凍し乾燥したもの。
こちらは角状に切り、蜜豆などで使う。
寒天は煮詰めて冷却してゼリー化するが、葛切は煮詰めるだけでゼリー化出来る。
ここ最近の暑さは異常だが、暦の上ではあと10日ほどで「秋」となる。
すでに「晩夏」なのである。
京都では、京都の夏を彩る祇園祭が行われている。
掲句…、調べたわけではないが、京都の祇園祭の風景であろう。
作者は東京生まれの鎌倉育ち。
のち、同じく神奈川県逗子に在住。
俳壇では食通、ワイン通として知られた人である。
新幹線の発車時刻まで間がある。
京都四条あたりで、葛切をいただいている。
食事や酒にするには時間がない。
かる~く、「葛切」をいただいて、発車時刻を待っている。
私だったら、京都駅の待ち合わせ室でスマホで時間をつぶしたり、駅周辺のカフェなどで時間を潰すだろう。
いかにも洒脱な作者らしい風景…。
きっと、店の中にも「祇園囃し」が聞こえてきているのではないか。
つまり「葛切」で「京都の夏」を想起させ、そこから「祇園祭」へとイメージが膨らむ。
「季語」の力…、連想力とはそういうことではないか。
「少しあまりし」刻に「葛切」なんて、確かに、いかにも洒脱ですね。
正子先生 コメントありがとうございます。俳句は「生き方」も大いに影響している、と、こういう句を見て思います。私のような、せこせこ(?)した人間にはこういう句は作れません(笑)。