「対岸」2018年8月号
主宰・編集人 今瀬剛一
結社誌、月刊、昭和61年創刊、茨城県城里町、創刊 今瀬剛一
主宰作品「日光」より、
大瀧や中段はづむひとところ 剛一
膝つくは傅くに似て泉汲む
泉湧くなり一つづつ癒えてゆけ
水音の涼しき限り神おはす
この瀧をあげます暑中見舞ひです
今瀬主宰というと、
しつかりと見ておけと滝凍りけり
を思い出す。
今瀬先生の代表作、というだけでなく、現代俳句の代表作と言っていい。
先生のうちから近いのかどうかわからないが、先生はよく茨城の大子の滝に行く。
この句も大子の滝で作られた、と聞いた。
(句の解説はこちらを…)
季節の風物詩3 凍滝
https://blogs.yahoo.co.jp/seijihaiku/2580982.html
今回も、「滝」「水音」「泉」など、「水」に関する句に優れたものが多い。
タイトルが「日光」であるから、この「大瀧や」は日光のどこかの滝だろう。
「中段」という漢語が力強い。
滝の途中に大巌があるのだろう。
帯なしていた滝水が、大きく跳ね上がっている様が見える。
今瀬主宰の句はダイナミックな写生句が多い。
それはそのまま、生の力強さにつながる。
「泉湧く」は、ご病気をされたのだろうか。
この句も前向きである。
一番好きだったのは、「水音の」である。
「しつかりと」の句も、瀧が擬人化されている。
この瀧はきっと「神」なのである。
今瀬主宰にとって、「水」は「神」なのであろう。
同人欄、会員欄より
雪嶺や三角屋根の土合駅 橋本公子
潮流は絶えずぶつかり瀬戸の夏 毛利きぬゑ
寝返りて傾く柱はしり梅雨 宮崎すみ
ざわざわと青葦分けて釣師来る 氏家ゆうき
抜きんでて蓮の巻葉は風の的 鈴木 勉
白蝶のいま羽根ひろげたる別れ 石堂摩夜子
今年33年目を迎える結社の充実した作品群である。
「写生」から「情感」へひろがってゆく詩情がある。
連鎖で目を引くのはやはり今瀬主宰の「能村登四郎ノート」、なんと「200回目」である。