『八月や六日九日十五日』のその後
著者 小林良作 発行 「鴻」発行所出版局
八月や六日九日十五日
この句は「日本国民にとっての国民的一句」として記憶されるべき…。
話は、今や、この句をどういう位置づけとして考えるか…、という方向に向かっているようだ。
知らない人の為におおまかに説明しておく。
著者・小林良作さんが、所属する結社「鴻」へこの句を投句した時、事務局より「先行句がある」という指摘を受けた。
調べてみると、多くの人が、この句を詠んでいたことがわかり、この句の一番最初の句を調べてみようと思った。
その成果を一昨年、『「八月や六日九日十五日」真の先行句を求めて!』にまとめ刊行したのである。
この本も読んだが、実に感心した。
小林さんは、初めは興味本位であったのだろうが、先行句を調べ、実際に作者や関係者に取材をしている内、数々の「人生模様」と出会い、戦争に対する思い、この句への祈りのような思いを感じるに至った。
今回の『「八月や六日九日十五日」のその後』は、それに対する反響や意見、さらに、第一弾刊行以後、わかったことなどを記している。
巻末近くに、「八月や六日九日十五日」を発表した作者と発表時期が表にされている。
作者が明確な人のみ列を記してみる。
昭和51年 小森白芒子 〈八月や六日九日十五日〉
昭和62年 植村 隆 〈八月や六日九日十五日〉
平成4年 諌見勝則 〈八月や六日九日十五日〉
平成10年 藤瀬宜久 〈八月や六日九日十五日〉
平成12年 西嶋あさ子 〈八月や六日九日十五日〉
平成15年 渕向正四郎 〈八月や六日九日十五日〉
福永法弘 〈八月や六日九日十五日〉
平成18年 小野巨子 〈八月や六日九日十五日〉
荻原枯石 〈八月や六日九日十五日〉
平成20年 愚草 〈八月尽六日九日十五日〉
平成21年 中村洋子 〈八月の六日・九日・十五日〉
平成24年 谷岡直美 〈八月や六日九日十五日〉
平成25年 近藤ともひろ〈八月や六日九日十五日〉
平成26年 堅山道助 〈八月や六日・九日・十五日〉
布施 良 〈八月や六日九日十五日〉
これだけでも「圧巻」である。
きっと、これらは氷山の一角で、この「八月や」の句を詠んだ人はもっともっとたくさんいるだろう。
で…、そうなると、これは「類句」なのか否か、という問題、また、この句は「名句」なのか「駄句」なのか、という問題がある。
冒頭で紹介したように、第一弾の本が刊行された時は、そういう話題があった。
しかし、どうもこれだけ多いと、類句とか名句か否かという問題より、日本人の誰もが共感、共有出来る俳句、と考えた方がいい、という方向になりつつある。
正直、私にはよくわからない。
しかし、本でも紹介されていたが、一部では、この句を当たり前のごとく「反戦俳句」と紹介していたが、そういうことではないような気がする。
反戦というより日本人、日本民族の歴史の一句と考えるべきだろう。