著者:宇多喜代子(うだ・きよこ)
句集名:森へ(もりへ)
第八句集 青磁社 2018年12月7日
一瞬が一瞬を追う雪解川
著者は昭和10年、山口県生まれ。
「草苑」で桂信子に師事、「草苑」編集長。
信子逝去後、「草樹」を創刊し、同誌会員。
第29回現代俳句協会賞、第35回蛇笏賞、第27回詩歌文学館賞、第14回現代俳句大賞、日本芸術院賞などを受賞。
現代俳句協会会長を経て現代俳句協会特別顧問。
樟落葉肩打つ膝打つわが戦後
寒天に置く月一個と定めたり
中空におおきな螺旋朴落葉
ふくろうのふの字の軽さああ眠い
白梅やこの家の百年二百年
十二月八日のかたちアルマイト
生きていること思い出す夏座敷
蛇の手とおぼしきところよく動く
日光月光ここまでは来ぬ弾礫
「あとがき」に、
息苦しくなると原生の森を安息の場と思念し、再生のよすがとします。
集名の所以です。
とある。
「森へ」というタイトルは、作者にとって「再生」なのである。
そう考えれば、この句集を契機とし、作者の心に、何か期するものが生まれているのに違いない。