著者:齊藤 保志(さいとう・ほし)
句集名:花投ぐ日(はななぐひ)
第一句集 コールサック社 2018年6月24日
濡れしまま海をのぼれる初日かな
1942年 東京生まれ、すぐ父母の郷里である福井県に疎開
2008年 サラリーマン生活を卒業後、明治大学俳句大学入学、以後沢山の方の句会に参加。
東京都杉並区在住。
秀句揃いの句集である。
残照に雪燃ゆ如き祖国かな
潮風のまづくぐりゆく茅の輪かな
海原になむあみだぶつ夏落暉
冬天に鳶の呉れたる二重丸
蝉生れて七日ほどなる大宇宙
江ノ電を大きく揺らす日焼の子
大鷹の闘ふ前はしづかなり
我なりにまつすぐ来たとかたつむり
虎が雨父の眠りし島を見ず
満月のひかりの音か五十鈴川
終戦日海の底よりあまたの眼
父は吾を肩車して終戦日
冬銀河被りて佐渡の深眠り
軽鳧の子の眼ひらきて母追へり
熱燗の魂のすきまを落ちゆけり
九頭竜川のはるけき蛇行風光る
一集を貫いている主情は、幼児期を過ごした福井という産土の讃歌、フィリピンで戦死した父、ともに生きた肉親へのせつせつたる思いであろう。
一句の呼吸がちまちまとしておらず、深く、大きい。
それが一句の深さ、大きさへとつながっている。
すべてが自然詠であり、人生詠なのである。
つまり、詠っている対象は「自然」であっても、その奥底には、必ず作者の複雑な感情が沈殿している。
実は、この作者とは句座をともにする仲間である。
その実力にはつねづね舌を巻いていた。
この一集には、その実力が遺憾なく発揮されている。
句友のよしみで、あえて言えば、初期作品はややオーソドックスに終始していて面白みがない。
この部分は厳選したほうがさらによかったと思う。
読み進むほどに詩的迫力のある作品、或いは詩的展開の大きい作品が満ちている。
それにしても〈軽鳧の子の〉に見られる写生の確かさ、〈終戦日〉の句に見る詩的観念の構築力、〈満月の〉に見られる清冽なロマンなどなど…どれも非の打ちどころのない、豊かな力量を感じる。
ぜひ読んでいただきたい句集である。
体育史学の立場から力石を研究する者です。某ブログにて「探梅や影まろまろと力石(齋藤保志)」を拝見しました。
この作品の拙著への掲載許可および吟詠地をしりたいのですが、許可を得た上で斎藤様の連絡先を御教示いただけないでしょうか、よろしく御配慮下さい。
下記のURLやブログには力石について記載しています。
高島愼助<元四日市大学教授>
URL http://www.za.ztv.ne.jp/takashim
高島様 お問合せありがとうございます。連絡取りますので少々お待ちください。
余計なことかもしれないですけど、このトップページの「ブログ」のところをクリックすると、Yahooブログへ行ってしまうので、修正、お願いしたく・・・
Rさん コメントありがとうございます。すっかり忘れてました。年明けには直します。ご指摘ありがとうございました。