「コトリ」第4号(通巻4号)
編集発行人 福島たけし
会誌・月刊・創刊2018年・神奈川県横浜市・創刊 福島たけし
昨年刊行を始めた、まだ初々しい会の会報であるが、運営する福島たけしさん自身は長年のキャリアを持つ実力俳人。
略歴を以下に。
1951年東京都生まれ。
森澄雄、小林康治に実作を学び、俳文学者・中村俊定の薫陶を受ける。
小林康治の「林」創刊より参加、終刊まで同人、康治没年まで師事。
俳人協会、俳文学会会員。
句集に『樹影』『江南』『街道』。
1991年より1993年まで中国派遣教師として南京大学で日本語の指導にあたる。
元神奈川県公立学校教員。
2011年二條淳誠師の下で得度。
小林康治は石田波郷「鶴」の高弟で、波郷の韻文精神を継承した俳人。
森澄雄は加藤楸邨門だが、生涯、波郷を敬愛した俳人である。
福島さんも、波郷、康治、澄雄の目指した俳句の「韻文性」を追求している。
また、俳文学にも精通し、教員、僧侶でもあり、中国で日本語教育に尽力し、山登りを楽しむ…、と多彩な才能と経歴を持つ人である。
福島さんとは旧知の仲で、先日、お話をする機会があり、
俳句の伝統を守り、新しい人材を育てたい。
という思いから、コトリ句会を始め、会誌を発行した、とお聞きした。
【巻頭作品】~福島たけし「初天神」
学業に励めと小雪初天神
紅梅のあと一押しで咲きさうな
紅梅の早くも開く小雪中
【1月の俳句】より
シャッター街店の奥なる鏡餅 荒川洋子
割烹着つかんで神楽に泣く子かな 五十嵐智子
小さき鵜の五六羽遊ぶ流れかな 松田和枝
朱の橋を渡り年賀の人となる 冨沢晴風
モノレールが砕く凍空の破片 長井直子
六地蔵抜け道に入り冬温し 峪口教和
風荒らし風花光り歩みゆく 齊藤里恵
蕗の薹名前大きく書き始む 枡田重則
のどけしや点前稽古の女子学生 荒川洋子
三浦道あの家この家の大根干し 福島たけし
「三浦道」の句は、三浦半島の冬の風景を詠んだもので、地元の私には親しく感じられる。
冬になると、三浦半島では至る所で大根干しが始まる。
その風景は圧巻で一見の価値がある。
「初心の方が多い」と話されていたが、初心者にありがちな、感情ばかりが先走る作品が眼につかないのは福島さんの指導の賜物だろう。
どの作品にも「丁寧な写生」を念頭に置いた作句姿勢を感じる。
荒川さんの「店の奥」、五十嵐さんの「割烹着つかんで」、長井さんの「砕く」などがそうである。
写生とはある意味「具象的表現」とも言える。
簡単に言えば、具体的である、ということ。
それが、読者に鮮やかな「風景」「映像」を喚起させるのである。
会誌には、
言葉の花束
穴山だより
『歳時記』の使い方
季節の彩り
など、エッセイも掲載されているが、俳句、季語に関するものが多く、読んでいて勉強になる。
以前にも書いたが、俳句の興隆に於いて、大結社の登場ということも必要ではあるが、それより、「庶民の文芸」として、地域の仲間が集まり、俳句に親しむという文化の創造が何より必要だと考える。
「コトリ」はその一助を担っている。
今後の展開を期待したい。