「枻」平成30年11月号
代表 雨宮きぬよ 橋本榮治 編集 遠藤真砂子
月刊誌・月刊・通巻273号・神奈川県横浜市・創刊 雨宮きぬよ 橋本榮治
難しい字だが「かい」と読む。
平成25年、雨宮きぬよさんの結社誌と、橋本榮治さんの結社誌が「合併」し、誕生したユニークな結社である。
この結社の「合併」というのは当時、話題を呼んだ。
「枻」の創刊、合併の意図がどうゆうことであったかはわからない。
私の記憶では、合併の意図は発表していない、と思う。
が、私は当時、「少子高齢化」による会員減少対策であろう、と考えた。
今は少し、夏井いつきさん人気などで、俳句の人気が盛り返した来た感があるが、ほんの数年前までは、悲観的であった。
結社の高齢化は進むが、新しい…、特に若い世代は結社にまったくと言っていいほど入ってこない。
どの結社も会員減少に悩んでいた。
会員が少なくなる、ということは経営が成り立たない、ということである。
この合併結社誌「枻」の誕生は、新しい結社のスタイルになる…、つまり、今後、結社の合併が進んでゆくのではないか、と考えた。
これは悪いことではない。
雨宮さんの師は殿村菟絲子(とのむら・としこ)。
殿村菟絲子は「馬酔木」を代表する女流俳人。
橋本榮治さんは「馬酔木」の元編集長である。
ともに水原秋櫻子門である。
俳句信条に共通するものは多かっただろう。
しかし、意外にこの合併スタイルは、現在、進んでいない。
では別の解決方法が生まれたかというと、生まれていない。
ハッキリ言って消滅を続けている。
それはいいことではない、と個人的に考える。
代表作品より
まだ雨を見てゐることも子規忌かな きぬよ
どの木にも雨の降り出す秋の庵
野分あと勉強部屋にゐる子かな
刃こぼれもなき月光を浴び帰郷 榮治
鳥渡る一竿に済む濯ぎもの
どの草もなびけば秋の草らしく
同人会員作品より
尽きるまで上る石段法師蟬 遠藤真砂子
さるすべり学舎の壁の被爆跡 高成田満理子
打水の水をまたぎて佃煮屋 雨宮喜和子
羊水のごとき大空ハンモック 宗像アヤ子
遠花火小さき町に暮らしけり 吉田篤子
さるすべりひねもす空を泡だてて 木野文子
千屈菜の束ねられたる赤さかな 北村和子
引かれたる草立ち上がる原爆忌 藤田千代子
雨乞の音を一つに締太鼓 岩澤久子
「馬酔木」といえば「抒情俳句」である。
評論家・山本健吉は、「馬酔木」の創始者・水原秋櫻子の句を「きれいさび」と評した。
その句風は今も健在である。