ポケットに妻の骨あり春の虹 中村猛虎
(第一句集『紅の挽歌』より)
自分の言葉で表現している句集である。
伝統的なルールに捕らわれていない作風が新鮮である。
作品は全て圧倒的な迫力で筆者に迫ってきた。
掲句も悲しみと思い出を共有して、まことに抑制とリアリズムが混在している。
筆者はこの様な哀しみに遭遇したならば何も出来ないのではないかと思う。
しかし、作者は平常心を戻すため、逆に俳句の力を借り、利用した。
氏は「亜流里」代表。
―「対岸」2020年8月号 平成俳句論考 執筆・池内雅一―