発行日 令和2年5月9日
発行所 俳句アトラス
著者略歴 1961年、兵庫県生まれ。2005年、句会「亜流里」設立代表。2011年、風羅堂第十二世襲名。現代俳句協会会員。「ロマネコンテ」同人。「俳句新空間」同人。
余命だとおととい来やがれ新走
痙攣の指を零れる秋の砂
鏡台にウイッグ遺る暮の秋
着ぶくれて私の入る穴がない
雪ひとひらひとひら分の水となる
食パンに入れる刃の音冬はじめ
子の一歩父の一歩に春の泥
アル中で死んだ親父の部屋に蟻
殺してと螢の夜の喉仏
蛇穴に入るおじさんは立ち止まる
枯野人明日履くための靴磨く
俯きしままぶらんこの少年よ
マフラーの中であいつをやり過ごす
春の雪溶かす人体積もる人体
昔のようにブランコを大きく振れなくなった
信号機変わる音して冬の夜
ポケットに妻の骨あり春の虹
―「蛮」54号 句集紹介 執筆・鹿又英一―