佐藤日田路(さとう・ひたみち)、昭和28年生まれ。
平成20年、「ロマネコンテ」入会、同人(休会中)。
平成21年、「海程」入会、27年、退会。
平成24年、句会ブラン代表(休会中)。
平成29年、「海光」会員。
「亜流里」会員、現代俳句協会会員。
第一句集。
「跋」に常に独創的で奥深く、自己の内面と向き合い、感じたことを率直に表現している、とある。
啓蟄や仮面土偶に妊娠線
亀鳴くや眠りの浅き電子辞書
春哀し海へはみ出すチョココルネ
彼にとって俳句は〝俳諧と詩のせめぎ合い″にあるのだろう。(林誠司「海光」代表)
陽炎や妻にかすかな火の匂い
青空を動かさぬよう魞を挿す
サーカスの転校生と桜餅
踵うつくし霜柱踏めばもっと
脳味噌をざぶざぶ洗う春キャベツ
シナプスの放電青き入学子
ただ濡れているだけでよい蝌蚪の紐
色鯉の口に暗黒入りけり
春愁のどこを切っても赤と黒
名をつけて子は親となる著莪の花
勉強がきらいな僕と蝸牛
作る人いつか乗る人茄子の馬
手を追えば足を忘るる踊笛
芋の露母さん僕は元気です
心臓に手足が生えて阿波踊
穴惑いあなたが尻尾踏んでいる
懐手笑いどころを間違える
肉体は死を運ぶ舟冬の月
「あとがき」に、私は十代から詩を始めた、私にとって俳句の短さが心地よい、できるなら硝子の心臓が鼓動するような情感を表現したい、と言う。
(俳句アトラス 2273円+税)
―「好日」2020年6月号 新著紹介 執筆・片岡伊つ美―