「海光」(林誠司代表)編集長の第一句集。
2003年より俳句を始め、2016年「海光」へ入会する。
薫風やテトラポッドの半乾き
滴りの深呼吸してをりにけり
ストローの吸ひ上げてゐる薄暑かな
水湧いてまだ水音のなかりけり
握られて鯵の光の厚みかな
足跡のそこだけ深き清水かな
膨らんで大きく縮む鳩小春
眠る山起こさぬやうに竹箒
2016年まで無所属という作者だが、一読して感性の良さが際立つ。
しかもごく自然な中で選び抜かれた言葉である。
中でも「水湧いて「握られて」「足跡の」の句は印象的である。
また、「滴りの」「ストローの」は感覚的な把握だが、実にうまく言い得ており、リズミカルな快さも印象的。
(令和3年8月28日、俳句アトラス、2,400円税込)
-「山彦」11月号(2021年)「受贈俳書紹介」 執筆・河村正浩-