ピラルクのよぎつたやうな花曇 川越 歌澄
(第二句集『キリンは森へ』より)
伝統的手法を打ち破った新しい描写の句集である。
全編、巨細で細緻な描写であるが対象への執心は薄い。
掲句も解釈は鑑賞者に委ね、非合理な実存の世界へと誘っているかの様だ。
勿論、筆者は作者を哲学的人物と言っているのではなく、「それなりにけふもしあはせ毒きのこ」のような現実を肯定し、夢を見る、知的で文学的な佳句もあるのである。
氏は「人」同人。
―「対岸」11月号(2020年)「平成俳句論考」 執筆・池内 雅一―