福島たけし著『寒オリオン』(俳句アトラス刊)
きぶし咲き山よみがへる雨の中
キブシ科の落葉小高木、山地に生ずる。
高さ二、三メートル、春になると葉より先立って多数の淡い黄色で穂状の花を咲かせる。
材は杖、柄、楊枝などとする。
マメブシ。
漢名、通条花。
やさしい春雨にぬれるとしっとりと美しく風情がある。
雄大な自然詠、ひそやかな人生諷詠、凛然たる詩魂、と帯文にある。
昨年には念願の句会「コトリ」を開かれている。
第四句集である。
丹沢山使者の如くに冬の日矢
渦をなす青葉如意輪観世音
大杉の彼方に夏の富士黒し
冬椿飾らぬ人も最も艶
春愁の空ととけあふ海の色
雲の峰千年杉をわしづかみ
源流はここより霧の山紫陽花
涅槃会の天も小雪を舞はせけり
―「帆」令和2年6月号 受贈句集紹介 執筆・井原愛子―