句 集:姫春蟬(ひめはるせみ)
著 者:勝俣 輝(かつまた・てる) 「千種」同人
青葉風吾には吾のエベレスト
句集名となった「姫春蟬」は箱根湯本の早雲寺の初夏に降る蟬時雨の主である。勝俣さんの作品には自立した自己を自在に、昭和、平成を生き抜いて来られた女性の爽やかな生涯が屹立する。
-加藤房子「序」より-
【収録作品】より
七度の干支を迎へむ初御空
真白なる割烹着もて福沸
戦火なき世であれかしと初詣
雛灯り一人の影を華やかに
春寒や爪繰りきれぬ機結び
佐保姫の目覚め待たるる峡の里
亀鳴くを聞き流したる米寿かな
亡き夫の知らぬ孫なり入学す
卯の花腐し時を忘れし墨書かな
真夏日やナースコールにひた走る
大黒柱に重代の栄菊薫る
献吟の社殿吹き抜く素風かな
【著者略歴】
昭和5年3月15日 栃木県今市市生まれ
平成9年 「秀」入会
平成20年 「千種」入会
神奈川県足柄下郡箱根町在住