『山懐』(さんかい)
著者:新谷 壯夫(しんたに・ますお) 「鳰の子」同人会長
寝転んでアイガー仰ぐお花畑
バザールのをんな立膝蕃椒売る
駆け抜ける風のかたまり競べ馬
あらゆる場面から詩を掬い上げようとする新谷さん。
海外赴任先で得た句、趣味の登山の句、行事の句など『山懐』には新谷さんの多様な句の世界が広がっている。
スケール大きく豊かなみのりの一冊である。
―柴田多鶴子「鳰の子」主宰-
【収録作品より】
アンデスの山駆け下る雪解川
熊棚を残して栃の芽吹き初む
矢を渡す師範の所作の淑気かな
西行の日と決めてけふ花を詠む
濡れし身を乾すにほどよき岩魚の火
村歌舞伎厚化粧して娘役
苔の色よみがへりたる雨水かな
天牛は虫の貴公子髭にも斑
月餅を購ひ戻る雨月かな
環濠の水の昏きに菱の花
龍の玉言の葉探すかに探す
【著者略歴】
昭和16年 兵庫県生まれ
昭和39年 松下電器株式会社(現、パナソニック(株))入社
平成5年 インド及びアメリカに計8年間勤務
平成13年 パナソニック(株)定年退職
平成18年 職場OB俳句会入会、柴田多鶴子に師事
平成23年 俳誌「鳰の子」創刊同人
「鳰の子」同人会長、俳人協会会員、大阪俳人クラブ会員