「句集・著作紹介」~「雲の峰」3月号
著者は1948年熊本県天草生まれ。
2000年柿衞文庫也雲軒俳句塾にて作句開始。
03年「火星」入会(のち退会)、13年「とんぼり句会」参加。
14年俳壇賞受賞。
17年「香天」入会。
岡田耕治「香天」代表は帯文で
けむり茸踏んで花野のど真ん中
「渡邉美保さんが切り取った風物、それぞれに息を鎮めて立ち会うと、生きることのかなしみは生きることのよろこびだと思えてくる。」
との言葉で称える。
本書は第一句集にして自選句集という。
「主宰や代表の選を仰いで纏めることが多いなか、潔いことである。」
と、ふけとしこ氏は序に記す。
跋では内田美紗氏が著者の進化に期待を寄せる。
自選句より
土に釘つきさす遊び桃の花
薪積む十一月の明るさに
すかんぽの中のすつぱき空気かな
烏瓜灯しかの世へ櫛買ひに
海鳴りや布団の中にある昔
蓬莱や海ひろびろと明けきたる
実在写生と観念写生を自在に行き来する芯の強さを内在した句集である。
―小林伊久子―