『るん』辻村麻乃著 俳句アトラス
詩人の父と俳人の母を持つ作者は、詩の国からやってきたのではないかと思わせる自由で柔軟な発想で、独特な世界を詠んでいる。
春峰や深き森から海の音
電線の多きこの町蝶生まる
鞦韆をいくつ漕いだら生き返る
夏の雨耳石の破片漂うて
心の内を出したり抑えたりして
思春期や怒つた顔で薔薇を買ふ
爽やかや腹立つ人が隣の座
誰にどのような手紙を? ドラマに…。
夏帯に渡せぬままの手紙かな
尊父から娘に宛てた詩に対して
おお麻乃と言ふ父探す冬の駅
序にも跋にも詩的な言葉があふれている。
詩情豊かな句集に感謝。
1964年東京生まれ。
埼玉県朝霞在住。
1994年「篠」入会。
「篠」編集長、副主宰。
「ににん」創刊同人。
現代俳句協会会員。
執筆者:山口 登 「鳰の子」2018年12月号「句集に学ぶ」