
句 集:翠 嵐(すいらん)
著 者:新谷 壯夫(しんたに・ますお)
「鳰の子」元・同人会長、第二句集
ISBN978-4-909672-37-7
定価:2,970円(税込)
夏草の繁りかき分けはせを句碑
山寺の階洗ふ皐月雨
火の入るる封人の家そぞろ寒
新谷さんは趣味多彩で俳句はもちろんのこと、弓道・登山・旅行などエネルギッシュに行動されています。中でも奥の細道をたどった句の数々は圧巻です。
第一句集から五年間の充実の第二句集です。
-柴田 多鶴子「鳰の子」主宰-
収録句より
生るるは罪にはあらず春の蝿
酔ひほどほど忘年会の手締め役
紅塗ればひとまづ女村歌舞伎
凩や麒麟の耳の裏がへる
葡萄熟るひとしほ青きエーゲ海
僧の所作闇が呑みこむ送水会
競漕のひと漕ぎ橋を潜りぬく
負け牛の綱放さるる青野かな
天仰ぎ高らかに鬨羽抜鶏
墓洗ふ両手にバケツでは足りず
宙乗りの幽霊の足夏芝居
身に入むやもっと光を難民に
【著者略歴】
大阪府枚方市在住
昭和16年 兵庫県生まれ
昭和39年 松下電器株式会社(現・パナソニック(株))入社
平成5年 インド及びアメリカに計8年間勤務
平成13年 パナソニック(株)定年退職
平成18年 職場OB俳句会入会、柴田多鶴子に師事
平成23年 俳誌「鳰の子」創刊同人
令和元年 第一句集『山懐』上梓
令和6年まで「鳰の子」同人会長を務める
令和6年 第二回鳰の子同人賞受賞
「鳰の子」同人、俳人協会会員、大阪俳人クラブ会員

句 集:海 光(かいこう)
著 者:林 誠司(はやし・せいじ)
「海光」代表、第三句集
ISBN978-4-909672-32-2
定価:2,500円(税込)
海吠えよ白さるすべり咲く限り
海への尽きせぬ愛着を、海が確かに受けとめてくれているという手応え。句集名に「海光」を選んだのは、そんな自負の表われではないか。雄々しく、それでいて稚気を失わぬ純真な詩心の貫流した一冊である。
ー村上鞆彦ー
収録句より
万緑に怒気のみなぎり悪路王
寝ころぶとわたしも平ら秋の空
夜食とるラーメン分の本どかす
蜜柑山どすんと海が落ちてをり
おたまぢやくし大きな脳で泳ぎけり
わだかまり残りし墓を洗ひけり
風が磨ぐ神の山々ななかまど
母の日や遠くまあるく土星の輪
江の島へ向かつて水を打つてをり
夏惜しみけり半日のレンタカー
火のついて紙の舞ひをり一遍忌
重力のバラ一輪のたわみかな
本能寺脱ぎし白靴より熱気
【著者略歴】
神奈川県横須賀市在住
1965年 東京都荒川区生まれ
1990年 句作を始める
1991年 「河」入会、角川照子、角川春樹、吉田鴻司に師事
在籍時、角川春樹新人賞、河新人賞受賞
2001年 第1句集『ブリッジ』刊行
2002年 『ブリッジ』で第25回俳人協会新人賞受賞
2012年 第2句集『退屈王』刊行
2016年 俳句愛好誌「海光」創刊、代表
《現 在》 「海光」代表、俳人協会会員

句 集:顔の原型(かおのげんけい)
著 者:石井 稔(いしい・みのる)
「好日」同人、第二句集
ISBN978-4-909672-36-0
定価:2,750円(税込)
コロナ禍を経て社会も人も大きな変化がありました。しかし今はっきりと思うことは、俳句の韻律と芳醇な季語の世界は変わることがないということです。そしてさらに言えば、俳句に詠われる人間の心は何ら変わることがないということです。コロナ禍はそんな確信を私に与えてくれました。
ー石井稔「あとがき」よりー
収録句より
万物に色あり木瓜の花の咲く
春宵の触れれば冷えしものばかり
青々と雨音のして豆ごはん
東京は故郷ベランダに茄子の花
かあさんはソファーの長さ小六月
朧夜のクラリネットに手の温み
武器持ちしことなきわが手衣被
微笑みが顔の原型草の花
話すやうに書く手紙なり桃の花
コップにパセリぼんやりとした平和
追ふでなく振り向くでなく年用意
白梅のきつぱりプラトニックなり
蝶は自在飛ぶも止まるも死ぬことも
物すべて垂直に落つ菊日和
冬の日の扇に開く色見本
【著者略歴】
千葉県佐倉市在住
1958年 東京都台東区生まれ
1998年 「好日」入会
2001年 「青雲賞」受賞
2010年 「好日賞」受賞
2012年 第一句集『月曜の茸飯』出版
2023年 「白雲賞」受賞
《現 在》「好日」白雲集同人、現代俳句協会会員

句 集:馴染の鴉(なじみのからす)
著 者:西岡 みきを(にしおか・みきお)
「雲の峰」同人、第二句集
ISBN978-4-909672-35-3
定価:2,500円(税込)
『馴染の鴉』は『秋高し』につづく著者の第二句集である。「秋高し」ではお住まいの地、香川県屋島を中心に丁寧に詩情を探した好句が多かったが、『馴染の鴉』では、更に対象に踏み込んでいるのが分かる。〈目鼻立ち良き子猫〉〈さきほどの蝶〉〈馴染みの鴉〉などの作品をみると、子猫や蝶や鴉が俳句の対象としての存在でなく作者自身の一部として、作者の友として作者と共に生きていることが分かる。対象と共生する、自然と共生する心情が見事である。
―朝妻 力「雲の峰」主宰―
収録句より
目鼻立ち良き子猫居る札所道
我が背より高く鰡飛ぶ薄暮かな
さきほどの蝶に出くはす帰り道
首振りて鳩きびきびと若葉風
父の日や大吟醸を仏前に
麦稈帽父と泳ぎし頃をふと
分け合ひておじや啜りし戦後ふと
蒙古風馴染の鴉見当たらず
久し振りに碁石並ぶる夜長かな
道問はれ遍路としばし同行す
麻痺したる手を振る母や余花一樹
収穫を終へたる棚田鵙高音
【著者略歴】
西岡 みきを(本名:西岡 幹夫)
香川県高松市在住
昭和11年1月3日生まれ
昭和35年3月 山口県立医科大学卒
昭和40年3月 山口大学医学部大学院卒
昭和41年12月 山口大学助手
昭和48年7月 ワシントン大学医学部(シアトル)に留学、昭和50年8月帰国
昭和54年6月 山口大学医学部講師、同12月 助教授
昭和57年4月 香川医科大学教授
平成13年4月 香川医科大学名誉教授、現在に至る
平成15年4月 愛媛労災病院院長、平成18年定年退職
以降、地域の病院で消化器内科の診療に携る他、高松大学生涯学習教育センター講師、さらにNHK文化センター高松講師を務め、現在に至る。
平成18年 俳句結社「雲の峰」(朝妻 力主宰)に入会
令和3年7月 第一句集『秋高し』刊行
《現 在》 「雲の峰」照葉集同人、公益社団法人俳人協会会員

句 集:枯野(かれの)
著 者:伊藤 強一(いとう・きょういち)
「海光」同人、第一句集
私家版
収録句より
節分や早く帰りて鬼の役
散るそぶりして風さそふ桜かな
秋の蚊の残りの命賭けて来る
うたた寝のじいじ起こすな猫じやらし
青柿の落ちる瞬間風光る
老境の入り口曼珠沙華の燃ゆ
夕焼や旗艦三笠は陸の上
閼伽桶を両手にくしやみ寺男
家族にて使ひ回した宝船
母の日や家計たすけし裁ち鋏
やつことは俺のことかと冷奴
墓洗ふすこしはなれて墓仕舞
さまざまな人生それぞれに枯野
【著者略歴】
伊藤 強一(いとう・きょういち)
東京都杉並区荻窪生まれ、在住
昭和19年4月 東京都杉並区荻窪に生まれる
昭和38年3月 都立荻窪高等学校卒業
同年4月 芝信用金庫入職
昭和42年3月 中央大学第二経済学部卒業
平成21年10月 芝信用金庫退職
平成24年4月 公益財団法人日本テレビ小鳩文化事業団「言葉の寺子屋 俳句塾」受講
平成27年12月 高橋白雀に師事
令和元年11月 林誠司に師事
令和4年11月 「海光」(代表・林誠司)同人

句 集:四方の春(よものはる)
著 者:位頭 美智子(いとう・みちこ)
収録句より
たなはる山遥かなり徒遍路
走り根を踏んで高鳴る遍路鈴
幾山河越えてささらの遍路杖
花桃や三ツ重ねの遊山箱
掛軸のときにさゆらぐ夏点前
終戦日慟哭の母まなうらに
忌を修すのみのふるさと銀河濃し
山眠る二十四余ヶ寺侍らせて
水仙を豊かに活けて客を待つ
ふるさとの大河耀ふ四方の春
大河の流れ豊かに年明くる
子の机そつと恵方へ向けにけり
堰の鶯日をまとひ風まとひ
終の地は阿波の吉野や梅ふふむ
マスゲーム伸びて縮んで秋高し
幔幕の寺紋くつきり小六月
豪農の偉容を今に新松子
私家版
【著者略歴】
昭和10年 徳島県徳島市生まれ、阿波市在住
平成27年 「青海波」入会
平成28年 青海波新人賞受賞
平成29年 「青海波」同人

句 集:百薬之長(ひゃくやくのちょう)
著 者:東條 純三(とうじょう・じゅんぞう)
白魚漁きらめくものを掬ひけり
純三さんの句には、正直に誠実に生きて来られた人柄を感じます。
写生尊重の落ち着いた詩情でありますが、
典型を超えた人生を送られた作者ならではの、
思いがけないことばの構成力にも出会います。
-古賀雪江「雪解」主宰-
収録句より
残雪の連山をのせ湖たひら
山鳥に耳から覚める三尺寝
捨てきつて空の抽斗冬に入る
神農祭まづ百薬之長を得ぬ
雪雲の高さに竹田城址あり
酒すこし落すをとこの七日粥
みづうみへ星座の傾ぐ夜寒かな
ヘルパーのみんながサンタ降誕祭
消毒の指の先より冴返る
茄子の牛作り訪問介護終ふ
現身を映せる雛の鏡かな
われの後蝶の来て飲む山清水
手袋に介護終へたる指をさめ
定価:2,500円(税込)
雪解選書372
【著者略歴】
千葉県市川市在住
昭和23年 北海道生まれ
平成13年 「雪解」入門
平成27年 「雪解」座の座賞
平成28年 「雪解」新人賞
現在、「雪解」同人、俳人協会会員

句 集:若 菜(わかな)
著 者:小宮 澄江(こみや・すみえ)
竹竿を空に廻して栗落とす
俳句の楽しさ苦しさをあじわいながら今日に至りました。
米寿を迎え、今まで生きてきた証として
句集を遺すのが最高の遺品だと考えました。
-「あとがき」より-
序文:林 誠司
収録句より
雨ふりて女人高野のとろろ汁
百選の水つめこんで山笑ふ
山鳩のくぐもる声や良寛忌
濡れながら光つてをりぬ甘茶仏
川に散り川へせり出す冬紅葉
吊し雛雀も貝も子ねずみも
春うららファミレスにある授乳室
吊橋や瀞にたゆたふ花の塵
放たれて鳩はみ空へ敗戦忌
ふるるたび仏間の桜こぼれけり
リラ冷えや米寿に届くファッション誌
歳時記の角すりきれて年暮るる
私家版
【著者略歴】
埼玉県日高市在住
昭和8年 埼玉県狭山市生まれ
平成21年より作句、「海」に入会
平成30年 「海」同人
令和3年 俳人協会会員
令和4年 「海」退会
平成24年 日高市文化祭俳句大会にて市議会議長賞
令和4年 日高市文化祭俳句大会にて市議会議長賞
現在、「星雲句会」(会長・佐藤隆夫氏)「梅句会」(指導・水村治雄氏)に所属

句 集:懺悔室(ざんげしつ)
著 者:松本 余一(まつもと・よいち)
薄情の世に慣れてをり甘茶仏
私は前向きに、あるいは楽しい人生を目標に、「生きていてよかったと思える老後」のために、生きて来たので決してない。選ぶ余地のない、仕方のない、そしてぎりぎりなところを生きてきた、と言ったほうが当たっている。
ー「あとがき」よりー
収録句より
死ぬ前にみんな笑うて花の雲
啓蟄やみんな三十七度五分
不登校は勇気要ること葱坊主
水筒のつめたい緑茶夏期講座
矢車や夜は星座を駆けめぐり
炎天下まだけりつかぬまま訃報
君すでに寝たきりとなる花野かな
残菊や好きに咲いたら好きにしろ
鷹の目に水の星だとわかるまで
友だちは女性ばかりや枇杷の花
早梅や自分のことで精一杯
日溜りは余生の為に野水仙
ISBN978-4-909672-33-9 定価2,750円(税込)
跋文:林 誠司
【著者略歴】
本名・成雄 東京都小金井市在住
昭和14年 東京都小金井市生まれ
昭和37年 青山学院大学文学部英文科卒
平成29年 NHK学園「土曜俳句教室」受講、「ひろそ火」入会、木暮陶句郎に師事
平成31年 第20回NHK全国俳句大会 入選
令和2年 第8回ひろそ火賞 佳作
第21回NHK全国俳句大会 秀作
第23回夢二俳句大会 上毛新聞社賞
令和3年 第9回ひろそ火賞 佳作
第22回NHK全国俳句大会 入選
「海光」入会、林誠司に師事
句集『言霊』刊行
令和4年 句集『ふたつの部屋』『言霊Ⅱ』刊行

句 集:曙光のガレ場(しょこうのがれば)
著 者:野田 冷峰(のだ・れいほう)
シングルマザーつかず離れずお月さん
冷峰さんが生み出す一連の作品は、現代における社会性俳句と言っていい。
社会性俳句を定義することは難しいが、彼の作品には、戦争・原爆・事件・格差社会・生活困窮・過疎化など、あらゆる社会問題や不条理に関心を持ち、事件記者としての鋭い視線と、市井人としての優しさの融合をもって詠いあげる、豊かで切ない詩情が顕著である。 ―林 誠司―
【収録句より】
子を連れて詫びたあの日の月夜かな
エノラゲイ雲間に見ゆる聖夜かな
夜食にも一行詩あり子らの飢
夏山の移動販売婆が待つ
黒葡萄刑執行の房重し
非正規を生きてサクサク霜柱
三十年御巣鷹の尾根露しぐれ
君が代にそむく一輪菫咲く
つまずけば呼ばるる思い秋彼岸
山茶花や妻在りし日も逝きし日も
波照間の水平線に銀河澄む
身に入むや弾圧史碑に蝌蚪一匹
敗戦日現人神の罪と罰
ISBN978-4-909672-31-5 定価2,750円(税込)
【著者略歴】
東京都東久留米市在住 本名:幸雄(ゆきお)
1942年 東京都豊島区池袋生まれ
1961年 日本経済新聞社入社 編集局工業部中小企業課配属、商店街担当記者
1966年 社会部に転属、事件記者
以来、記者生活30有余年を主に事件取材で過ごす。
1995年 法務室長
2000年 役員待遇
2006年 定年退職
俳句は1997年よりスタート。
日経社会部OB句会「酔吟会」に参加、その後「日経俳句会」「番町喜楽会」「谷端川句会」「谷中句会」などに参加。
2016年 俳句愛好誌「海光」(代表:林誠司)に創刊より参加
NPO法人大明理事、「海光」同人