句集・結社誌を読む3~「あだち野」

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「あだち野」2017年アンソロジー

 ~結社誌(主宰・一枝伸)、師系・土生重次、東京都足立区

 

結社誌名の「あだち野」は現在の東京都足立区周辺の古名。

平成9年に創刊。

一時期、一枝主宰の体調不良などにより休刊となったが、矢作十志夫さんの編集長就任を機に、年に一度、アンソロジーという形式で復刊。

巻頭随筆は、

池田澄子「船団」「豈」「面」

村上鞆彦「南風」主宰

日下野由季「海」編集長

と、外部の豪華な顔ぶれが担当。

池田さんが「摂氏一度と一語」、村上君が「新よりも深」、日下野さんが「『今』を生きるということ」というテーマで執筆している。

他に、

異論俳論4 新しい釣果を求めて  一枝伸

主宰作品

あだち野歳時記 ※季語と、その季語を詠んだ「あだち野」会員の例句を紹介

会員作品欄

あだち野俳句会関連記事

レポート 花見吟行、牡丹吟行、初夏吟行、初冬吟行

トピックス

などがある。

編集長である矢作さんは、昨年、俳人協会全国俳句大会最優秀賞を受賞するなど、さまざまなところで活躍を続けている俳人であり、なおかつ、元「ダヴィンチ」編集長という経歴を持つ。

誌面の至る所に「プロの編集者」の冴え、センスの良さが感じられる。

誌面の中で特に目を引いたのは、

「トピックス~足立俳連俳句大会で上位独占」

足立俳句連盟主催の俳句大会で、1位と2位を「あだち野」の会員が独占、という快挙を果たしている。

会員全体のレベルの高さ、充実ぶりが伺える。

総合1位(足立俳句連盟賞)

少年の夢は直線夏つばめ   天野みつ子

総合2位(足立区長賞)

母の日の介護の湯舟あふれをり  矢作十志夫

【主宰作品】より

東京の雪の一日ヘリコプター      伸

春一番二番三番一軒家

日を弾く一枚いちまい柿若葉

江戸よりの千住大橋更衣

【会員作品・花王集】より

歌留多跳ぶ畳の青さよかりけり   松木靖夫

尺取の尺取り損ねひと踊り     水本ひろ人

一年をぐいと流して蕎麦湯かな   西川政春

甲虫にらみ合うても戦わず     伊藤正玄

寒柝のあとに子供の声そろふ    礒貝尚孝

遠の目を土に戻して耕せり     村井栄子

花芒古墳を囲む水たひら      河合信子

親の目を盗んで仔猫もらひけり   二瓶里子

踊りだす洗濯ばさみ桜南風     菅沼里江

秋の風頬にやさしく島めぐり    小松トミ子

八十路より眺める世間草若葉    尾形けい子

いたはられいたはる齢花の冷    天野みつ子

この星を分け台風とハリケーン   石田むつき

イメージの狂ふのつぽのチューリップ  澁谷 遥

トンネルを八本くぐり海の家    竹内祥子

夏来れば夏のかたちに暮らしけり  岡田みさ子

風光る硯の海もひかりをり     越川てる子

新聞に切り抜きの窓夏休み     柿﨑瑛子

富くじに夢を追ひたる寺の花    國井京子

ひめゆりの少女曝書のなか老ゆる  矢作十志夫

作品全体としては喜びあり、悲しみありの、さまざまな作品世界が展開されているが、どの作品にも「向日性」が感じられる。

一枝主宰の指導の賜物であろうが、東京下町の人間が持つ先天的な明るさにも思える。

明るい、のびのびした生活詠が多く、それらが輝きを放っている。

同じ下町生まれの私などには、どこか懐かしく親しみを感じる作品群である。

あまり小難しいことや難解な表現を用いず、言葉の持つかがやきを大切にしているようだ。

昨今の俳句は、過度なインテリジェンス、或いは、奇抜な表現、取り合せなどが評価されがちだが、そういうところにばかり目が行くのは、鑑賞者の質が低いから、と言わざるを得ない。

こういう素直な表現からにじみ出てくる人間性、文学性、言葉の持つ輝きなどを味わうべきであろう。

悲しい句も過度の情の吐露を避け、淡々と表現することにより、しみじみとした人生哀歓を感じた。

 

【発行所】

〒123-0873 東京都足立区扇1-34-22

発行人/一枝 伸

編集人/矢作十志夫

 

※句集、結社誌、同人誌、俳句アトラスまでお送りください

 

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