句集・結社誌を読む1~「邑美野」創刊号

 

「邑美野」創刊号

~同人誌、俳句とエッセイ、季刊、鳥取県鳥取市発行

 

なんと読むのだろう…、と調べてみたら「おうみの」と読むらしい。

「発刊によせて」(坂田恵美子)で「鳥取市周辺の古称」と紹介している。

長島衣伊子「朴の花」主宰(神奈川在住)が毎月欠かさず、鳥取を訪問し、俳句指導をしている。その会員が、この地に俳句文化を大きく花開かせたい、と「邑美野」を発刊した。

前半は俳句、後半はエッセイと「句会の歴史」で構成されている。

 

【掲載句より】

雪晴れの光となりぬ一番機   青木英二

美しき事のみ想ひ門火焚く  有田あき子

達筆で「逢ひたいね」とあり年賀状  生田和枝

雪雫ポタリポタリの余生かな  岩中美知恵

ちちははの真ん真ん中の七五三 岩本桂子

雪方を吸ひつくしたる川青し  栄木恭子

白々と明けゆく野良に風薫る  影井 彩

青空に鳥たちの道牧水忌    坂田恵美子

子を膝に粉雪降る夜のものがたり  田中沙侑

かなかなや夫の背負ひし失語症  田村登和

大山を隠しきつたる雲の峰  中田栄治

香具山に雲湧きやまず更衣  中田裕子

一筋の川を跨ぐや鯉幟  林裕美子

山雲を突き破り来し冬落暉  東本禮子

元朝や無言のままの信号機  平田徒長子

ひと雨のありて涼しき余白かな  福田眞知子

 

編集後記(中田裕子)に「鳥取人は引っ込み思案」とある。

私は鳥取には数度しか訪れたことがないので、よくは知らないが、作品を読むとなるほどそうかもしれない…、と思う。悪い意味ではない。どの句も、大上段に構えず、人を驚かせるような大げさな表現を用いず、素直な言葉で表現している作品が眼を引く。もちろん、長島さんの指導によるところも大きいだろう。

しかし、内容は、自然あり、四季あり、風土あり、また、出産あり、介護あり…とさまざまな自然や人間世界や生活が展開されている。

経済や政治では、東京一極集中などと言われているが、俳句も例外ではない。私が思うに今、俳句で、元気がある地域は、東京近辺と関西だけだ。ほんの少し前までは、各地で俳句が活発で、地方地方に、厳然とした俳人や結社が存在した。今は寂しい限りである。今後の俳句にとって必要なのは「地方の活性化」である。

そういう意味で今回の「邑美野」創刊は大きな意義を持つ。もちろん、この、引っ込み思案(?)の「邑美野」のみなさんは、私が指摘しているような、大げさな意義などは意識していないだろう。

しかし、自分たちが好きで続けてきた俳句を定期的に公に向けて刊行してゆく。

そういう姿勢が各地で起こってきたら、これが大きなムーブメントになるのだ。

今後も気軽に俳句を楽しみ、作品を発表し続けていたただきたい。

 

【発行所】

〒680-0864 鳥取県鳥取市吉成2丁目15-26 坂田恵美子

発行人/坂田恵美子

編集人/中田裕子

 

※句集、結社誌、同人誌、俳句アトラスまでお送りください

(林 誠司)

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