水狂言いよよ山場の鯉つかみ 新谷 壯夫(第一句集『山懐』より)
作者は楽しみで作句しているに違いない、想像できる句集である。
ちなみに、本句集の装丁原画は奥様の作とのこと。
羨ましいかぎりである。
さて、博識であることは俳句にとって妨げにはならぬ。
掲句も季語の知識を韜晦などせず、おおらかに用いている。
「鯉つかみ」は歌舞伎の演目であるが、筆者も、幼い頃、木下サーカスで、太夫の扇子で噴水する「水からくり」を見た記憶がある。
あれも「水狂言」の一つだったのか。
氏は「鳰の子」創刊同人。
「対岸」2019年9月号「平成俳句論考」(執筆・池内雅一)