海野弘子句集『花鳥の譜』が「山彦」2020年9月号で紹介されました!

 

梅ふふむ睫毛を足してゐる鏡

昭和史に黒く塗りたる櫻かな

摘みて食ぶ胸に苺の雫かな

ロ短調のやうな六月けむりの木

パセリ食べ華麗な嘘を許しおく

秋思かな海見てぬぐふ老眼鏡

萩くくる己に容赦なきよはひ

冬薔薇棘の触れたる運命線

 

実に多彩且つ自在である。

中でも「昭和史」の句には深く共感。

自己の人生を前向きに進んでいるから、作品全体に生きている喜びが溢れている。

また、書道、アートフラワー、フラワーアレンジメントを趣味とされているように、都会的、且つ女性としての雅な作品も多い。

長嶺千晶「晶」主宰の帯文より。

舞踏会へと赴くやうな華麗な美しさに憧れた若き日々。

戦争によって封印された時代の記憶は、今、命の輝きのしずけさとなって蘇る。

海野さんが生涯を賭して追い求めた美のかたちが、ここに在る。

(令和2年5月30日 俳句アトラス 2091円(税別))

 

―「山彦」2020年9月号 受贈誌御礼 執筆・河村正浩)―

 

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