句 集:ふたつの部屋(ふたつのへや)
著 者:松本 余一(まつもと・よいち)
【序 文】林 誠司「海光」代表
ゲルニカの馬にたづねよ八月来
驚くのは余一さんの俳歴が僅か四年ほどであり、これらの作品群がほぼここ一年の作であることだ。
氏の作品には揺るぎない文学的志が宿っており、作品全体に情熱がみなぎっている。
―林 誠司—
【収録句より】
てのひらが包まれてゐる春日かな
目隠しをほどく手やさし花の雲
うららなり眠るも死ぬも眼鏡とる
風鈴や買ふとき風に好かれたる
森青蛙すこし動いて泡のなか
伊予みかん目の前あがる夏の月
復活はだれにもあつて万年青の実
この川にまぎれてゆけば秋の海
きのふよりけふの松島ななかまど
幸せは大地すれすれ福寿草
リハビリの様子問はるるラクダシャツ
咲いてゐるつもりのなくて返り花
ISBN978-4-909672-27-8 定価2,750円(本体2,500円+税10%)
【著者略歴】
本名・成雄
昭和14年 東京都小金井市生まれ
昭和37年 青山学院大学文学部英文科卒
平成29年 NHK学園「土曜俳句教室」受講、「ひろそ火」入会、木暮陶句郎に師事
平成31年 第20回NHK全国俳句大会 入選
令和2年 第8回ひろそ火賞 佳作
第21回NHK全国俳句大会 秀作
第23回夢二俳句大会 上毛新聞社賞
令和3年 第9回ひろそ火賞 佳作
第22回NHK全国俳句大会 入選
「海光」入会、林誠司に師事
句集『言霊』刊行
《住 所》〒184‐0012 東京都小金井市中町1‐7‐16
『ふたつの部屋』(松本余一著)を早速お送りいただき、ありがとうございました。
とてもお上手な俳句でおどろきました。一頁一句の贅沢さもその価値十分ですね。
好きな句がたくさんありましたが、以下にその中から挙げさせていただきます。
海底より見上ぐる水面風光る
花菫浄土に近き比良比叡
うららなり眠るも死ぬも眼鏡とる
常念岳の雪のかをりの花山葵
麻痺の身に彼の世の旅の夏衣
蓮見舟からだの軽くなるばかり
復活はだれにもあつて万年青の実
この川にまぎれ行けば秋の海
遠くには遠くの銀河門司どまり
100円で売られて冬の処女句集
爪先を出して柚子湯の香の豊か
一望の棚田一枚ごとの雪
正子さま ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。